研究課題/領域番号 |
26286084
|
研究機関 | 株式会社豊田中央研究所 |
研究代表者 |
杉山 純 株式会社豊田中央研究所, 分析部 量子ビーム解析研究室, 主監 (40374087)
|
研究分担者 |
幸田 章宏 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 講師 (10415044)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | イオン拡散 / 量子ビーム / ミュオン / 中性子 / 電池 / リチウム / ナトリウム |
研究実績の概要 |
量子ビームの一種である表面ミュオンビームを用いて、種々のイオン拡散材料とその候補材料について、高温イオン拡散挙動と低温磁性を調べた。実験には、J-PARC(東海村)、ISIS(英国、理研RALを含む)、TRIUMF(カナダ)、PSI(スイス)を利用した。ミュオンビームの時間構造を考えて、前2者では主に拡散を、後2者では磁性を測定した。 特に現行のLiイオン電池に次ぐNa電池用正極材料の磁性と拡散を調べた。例えば、100℃以上でも安定なオリビン系のNa0.7FePO4において、世界で初めてその低温での磁気構造と高温でのNa拡散係数を求めた(論文2,国際会議招待講演1、講演2)。同様にNa電池の正極材料として研究されているNa0.5VO2については、巨視的な磁化率測定で13Kに磁気転移が予想されていたが、ミュオン測定により実際の転移は1.9Kであることを明らかにした(論文1,講演1)。拡散測定は今後の課題であるが、VO2の作る2次元3角格子上での磁気秩序の発現は、競合系の磁性の観点から興味深い。さらに類縁構造のNa0.7CoO2中のNa拡散挙動を中性子準弾性散乱で調べ、従来のミュオン測定結果と矛盾しない結果を得た(論文1,講演1)。 Liイオンの拡散挙動については、現行材料としてLix(Co1/3Ni1/3Mn1/3)O2(論文1、講演1)とLixNiO2系を調べた。従来の結果を支持する結果となり、ミュオン・スピン回転緩和法によるイオン拡散測定の妥当性が再確認された(招待講演2)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Li拡散材料、Na拡散材料、それらの候補材料について、ミュオン・スピン回転緩和測定と中性子準弾性散乱測定を実施した。各々の高温イオン拡散挙動と低温磁性を明らかにし、論文10、講演16(含む招待講演3)を公表したから。
|
今後の研究の推進方策 |
Liイオン拡散材料については、Li電池の正極材料としてオリビン系Li(FeMn)PO4系を、負極材料としてLi-Ti-O系と黒鉛系を、電解質材料としてはリン硫化物系を対象とする。Naイオン拡散材料については、電気化学的に合成したNaxCoO2を用いて、低温磁気状態図を再確認する。またイオン拡散の候補材料として層状構造酸化物、層状構造セレン化物(CrSe2等)、層状構造リン化物の磁性と構造の相関を調べる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
クライオオーブン導入後の試験運転で必要となる消耗品等に使用するという年度当初の予定であった。しかし、平成27年1月にJ-PARC物質生命科学実験施設ミュオンビームラインにおいて電源火災が発生し、この原因究明と対策、および直接に関係しない実験機器にあっても安全確認がおわるまで通電・運転ができなくなってしまった。このため年度内にクライオオーブンの試験運転が困難となり、次年度に持ち越さざるを得なくなった。
|
次年度使用額の使用計画 |
装置消耗部品費として利用。
|