研究課題
量子ビームである表面ミュオンビームを用いて、引き続き各種の電池材料中のイオン拡散を調べた。また低温磁性との相関も調査した。特に、Li電池用の負極材料である、Li4Ti5O12とLiTi2O4スピネル中のLi拡散挙動をミュオンと8Liによるβ-NMR法により調べた。両者の結果は極めて良く対応しており、Liの自己拡散を捉えていることが明らかとなった(論文1,国際会議招待講演1、一般講演2)。電気化学合成したNaxCoO2については、x=0.5-0.75の範囲の試料の測定を行ない、従来の固相反応で合成した試料とはかなり異なる結果を得た(一般講演1)。従来の酸化物に捕われず、セレン化物とリン化物についても、主に低温磁性から調べ始めた(論文2,一般講演2)。特にCrSe2は、Li電池正極材料LiCoO2からLiが全欠損した構造で、Crの作る2次元3角格子上の磁気基底状態の解明が望まれていた。ミュオン測定と解析の結果、格子非整合なスピン密度波の形成が示唆された。この点については、さらに考察を重ねてまとめる予定である。同様にリン化物、Sr1-xCaxCo2P2に於も圧力下でのミュオン測定により、Co2P2の面間隔と磁性の相関を調べ始めた。
2: おおむね順調に進展している
順調にビームタイムを獲得し、予定した材料および新たな材料系の実験を行なっているから。
Li電池の固体電解質材料、Li電池の正負極材量、Na電池の電極材料、全固体薄膜電池等を対象にして、広くイオン拡散と構造・磁性の相関を調べ、固体内イオン拡散の決定要因を明らかにする。LiTi2O4とLi4Ti5O12の結果については、論文としてまとめる。電気化学合成したNaxCoO2については、さらに広いx範囲での測定を行い、全領域での磁気状態図を決定する。また高温でのNa拡散測定により、磁性とNa拡散の相関を調べる。Sr2-xCaxCo2P2については、圧力依存性測定を完了させ、結果をまとめる。CrSe2系については、LiやNaをインターカレートさせた材料を合成し、低温磁性と高温イオン拡散を調べる。
2016年2月に予定されていた英国RALでの実験が、施設側の都合で2016年4月以降に延期になったため。
2016年4月以降の実験旅費として、使用する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 6件、 査読あり 7件、 謝辞記載あり 7件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 8件、 招待講演 1件)
Physical Review B
巻: 91 ページ: 144423-1-5
10.1103/PhysRevB.91.144423
巻: 92 ページ: 014417-1-9
10.1103/PhysRevB.92.014417
Physical Chemistry Chemical Physics
巻: 17 ページ: 22652-22658
10.1039/C5CP02999F
Physics Procedia
巻: 75 ページ: 868-875
10.1016/j.phpro.2015.12.112
巻: 75 ページ: 435-443
10.1016/j.phpro.2015.12.053
巻: 75 ページ: 426-434
10.1016/j.phpro.2015.12.052
EPJ Web of Conferences 83, 02008 (2015)
巻: 83 ページ: 02008-1-5
10.1051/epjconf/20158302008