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2015 年度 実績報告書

ナノ構造体の電子物性解明に向けた統合シミュレーション手法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 26286085
研究機関東京大学

研究代表者

常行 真司  東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90197749)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード第一原理電子状態計算 / ナノ構造 / 分割統治法
研究実績の概要

密度汎関数理論などの第一原理に基づく電子状態計算手法は、物質中の原子配置と電子物性を高精度に理論解析・理論予測するための強力な手段である。ところが通常の第一原理計算の計算コストは,系の大きさの3乗もしくはそれ以上のべきで増加するため,複雑なヘテロ界面を含むナノ構造体への適用には多くの計算資源を要する。そこで大規模系を小さな部分系に分割し,個々の部分系における電子状態計算をほぼ独立に行う事で,計算コストを系の大きさの1乗に収める、いわゆる分割統治法(オーダーN法の一種)が開発されているが、全系に広がった電子状態やそれがもたらすエネルギースペクトルが記述できないため、利用範囲が限定されている。
そこで本研究では、分割された各部分系(fragment)の波動関数を、全系波動関数を表現するための基底関数として用い、さらに部分系のエネルギースペクトルも利用することで、高速に全系の電子エネルギースペクトル計算を実現する手法の開発を行っている。
27年度当初まで、分割統治法の一種であるLS3DF法に基づき手法開発を続けてきたが、LS3DF法では外側に真空層を置いた孤立系として部分系の計算を行うことや、この手法の特徴として部分系の重なりが大きく基底関数が極めて過剰(過完備)になることから、通常の全系電子状態計算と比べて計算精度が悪いという問題があった。しかしながら27年度途中に、分割統治法の別種であるLean Divide and Conquer (LDC) 法を使うことで、これらの問題を軽減できる見通しが立ったため、プログラムの大幅な修正を行った。プログラム修正は年度内に終了し、実際エネルギースペクトルの計算精度が1桁以上向上した。また部分系の間で非整数の電荷移動の起きる系や構造が複雑で部分系への分割の難しい系への適用が原理的に可能になるなど、手法の汎用性が大きく向上した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初は分割統治法の一種であるLS3DF法をもとに、ナノ構造体の全系電子状態計算を行う計算手法(LCFO法)を開発する計画であった。ところが平成27年度の途中で、同じ分割統治法の中でもLean Divide and Conquer (LDC)と呼ばれる手法を用いれば、より汎用性と計算精度の向上が期待できることがわかったため、全面的なプログラムの書き換えを敢行した。実際、これまでのテスト計算結果により、計算精度が飛躍的に向上することが確認できた。また原理的に汎用性も向上しているはずである。一方で、この手法変更に伴うプログラムの書き換えに時間を要したため、当初予定していたハイブリッド型の交換相関エネルギー汎関数の導入と、ナノ構造体の実証計算までは終了することができなかったことから、「(3)やや遅れている」と判定した。

今後の研究の推進方策

ハイブリッド型の交換相関エネルギー汎関数の導入は27年度中に開始しており、これを早急に完了させる。また半導体超格子など、ナノ構造体での実証計算を進め、手法として完成させる。

次年度使用額が生じた理由

すでに記載したように、27年度途中から基盤とする分割統治法の手法を変更し、プログラムの修正に年度末まで要したことから、大規模な実証計算を進めることができなかった。そのため予定していたPCクラスタの増強や情報基盤センターでの計算機利用が先送りとなったため、経費の繰り越しが生じた。

次年度使用額の使用計画

繰り越した経費は、計算機資源の確保のために使用するほか、今後の展開へとつなげるべく、プログラムのインターフェース整備や成果発表とのために使用する予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [学会発表] 分割統治法の部分系軌道を用いた大規模系一電子ハミルトニアンの次元縮約2016

    • 著者名/発表者名
      山田俊介,明石遼介,常行真司
    • 学会等名
      日本物理学会第71回年次大会
    • 発表場所
      東北学院大学(宮城県・仙台市)
    • 年月日
      2016-03-22
  • [学会発表] 第一原理からの物性モデリングとポスト「京」/マテリアルズインフォマティクス時代への展望2016

    • 著者名/発表者名
      常行真司
    • 学会等名
      TCCI第6回研究会
    • 発表場所
      分子科学研究所(愛知県・岡崎市)
    • 年月日
      2016-03-15
    • 招待講演
  • [学会発表] A new method for calculating one-electron energy spectrum of a large system based on a first-principles divide-and-conquer method2015

    • 著者名/発表者名
      Shunsuke Yamada, Ryosuke Akashi, Shinji Tsuneyuki
    • 学会等名
      Psi-k 2015 Conference
    • 発表場所
      San Sebastian (Spain)
    • 年月日
      2015-09-09
    • 国際学会
  • [備考] 常行研究室研究紹介「分割統治法に基づく一電子エネルギースペクトルの第一原理計算手法」

    • URL

      https://white.phys.s.u-tokyo.ac.jp/research/divide_and_conquer.html

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公開日: 2017-01-06  

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