研究実績の概要 |
近年の電子機器の高周波数化・省電力化・微細化にともない,注入同期という古くからの基礎技術が一層深化しつつあり, 現在の様々な応用においてもその有効性が報告されている. 本研究は,種々の現実的制約条件下での注入同期の性能限界(実現可能限界)を解明するとともに,これを達成する最適設計論を構築し,その実験検証を行う.さらに,この最適設計論を援用し応用分野開拓に踏み込んでいる. 具体的には,(i)新規な非線形最適化理論を開拓・強化しつつ,現実的な注入同期の制約条件に対応可能な系統的最適設計論とアルゴリズムを構築し,(ii)これをマイクロエレクトロニクス,植物工場(生物時計),さらにナノマテリアルにまで至る応用開拓に組織的に適用することを目的としている. 上記の(i)の非線形最適化理論を構築するために,まず出発点として単一振動子の場合において,理論的基礎を整備する必要があり,これはある程度完成した. 成果として, この方向に関する成果が論文発表される予定である. また, 当初予期しなかった理論的進展もあり, この方向を模索した結果, 想定外の成果も得られた. 一方, 上記の(ii)の応用開拓として,その対象となるマイクロエレクトロニクス発振器において,位相応答関数(位相リセット曲線)という非線形特性にかかわるデータを精度よく得ることが肝要であったが, これについては当該年度に実際の電子回路の実験系に対し一定の成果が得られた. その結果をもとに,(i)の最適化理論に基づく設計アルゴリズムが適用され, 数値シュミレーションと実験系による検証により, 理論の有用性が確認された. 現在は最適設計アルゴリズムの適用対象を広げる段階である.
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策として, 理論的側面での進捗が計画を上回り進んでいる現状を踏まえ, 植物工場などの新規な応用開拓を後に回し, ここまでの研究成果のアウトプットの方向の見直しを行う. 具体的には, 新規に得られた最適化理論の深化・汎用性の向上を検討し, 更に, 構築された最適設計アルゴリズムにGUI機能を持たせたソフトとして完成し公開することを目指す.
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