研究課題/領域番号 |
26287001
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
宮本 雅彦 筑波大学, 数理物質系, 教授 (30125356)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 頂点作用素代数 / 有限性 / モジュラー不変性 / トレイス関数 / 自己同型群 / モンスター単純群 |
研究実績の概要 |
頂点作用素代数は楕円モジュラー関数の係数と最大の散在型有限単純群モンスター単純群の指標の一致から生まれたムーンシャイン予想を解決するために1986年にBorcherds が導入したものであるが、現代では共系場理論を数学的かつ代数的に厳密化したものだと理解されている。ムーンシャイン予想の解答として与えられたムーンシャイン頂点作用素代数は自己同型群として最大の位数を持つ散在型有限単純群であるモンスター単純群を持つが、その関係を詳細に調べるためには、部分頂点作用素代数の表現を調べる必要がある。その部分頂点作用素代数の表現と部分群との関係を正確に記述するためには、モジュラー不変性とともに、有限性や有理性などを示さなければならない。例えば、ムーンシャイン頂点作用素代数では48変数の関数としてトレイス関数を捉えることができる。そのような状況を利用し、モジュラー不変性の意味を高めるために、平成27年度は、Mattheu Krauel氏と共同で研究してきた多変数トレイス関数のモジュラー不変性を発表した。 また、同時に、モンスター単純群の個々の元に対する軌道理論を調べるために、可解自己同型群に対しては軌道予想を解決した。さらに、一般ムーンシャイン予想を解決するために必要な有理性を得るために、Scott Carnahan氏と共同で研究を進め、最終的に可解自己同型群に対しては、頂点作用素代数の軌道における有理性の証明が完成した。これらの結果は、論文として学術雑誌に投稿するとともに、電子媒体であるArXivに掲載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
軌道理論の有理性の証明は、アイデアを実現することに苦労していたが、Scott Carnahanとの共同研究により、完全証明をすることに成功した。また、軌道理論の有限性に関しては、可解群だけでなく、かなりの非可解有限単純群に対しても解決する道筋を付けた。これらは群論的にも非常に面白い事実を含んでおり、更なる発展が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
28年度の目標は、ホロモルフィック頂点作用素代数の一意性を示すために、軌道理論とウエイト1の元がなすリー代数との関連を調べることである。これには研究代表者が最初に作り出した頂点作用素代数のテータ級数が大きな働きをすると期待している。同時に、このようなテータ級数の研究において、多変数トレイス関数におけるモジュラー不変性の証明が、実解析的なトレイス関数やテータ級数に対しても有効であるかどうかを確認することがこれからの目標である。その為に、群論研究者や代数的組み合せ論研究者だけでなく、モジュラー形式の研究者やムーンシャイン現象の研究者と議論を続けていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度開催予定の研究集会が平成28年度に移動したため。本年度、台北である研究集会の前後に、この分野の専門家であるR. Griess教授や Lam Ching Hung教授と打ち合わせをする
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次年度使用額の使用計画 |
28年度は、台北である研究集会の前後に、この分野の専門家であるR. Griess教授や Lam Ching Hung教授と打ち合わせをする。また、11月に国際研究集会を計画しており、その時期にムーンシャイン関係の研究者を招聘する予定である。以上の計画を進めるための旅費や謝金として使用予定である。
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