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2016 年度 実績報告書

導来圏の安定性条件とDonaldson-Thomas不変量の研究

研究課題

研究課題/領域番号 26287002
研究機関東京大学

研究代表者

戸田 幸伸  東京大学, 数物連携宇宙研究機構, 准教授 (20503882)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2019-03-31
キーワードGopakumar-Vafa不変量
研究実績の概要

今年度はD.Maulik氏と共同でGopakumar-Vafa (GV) 不変量の数学的定式化を行った。GV不変量とは1998年に物理学者のGopakumarとVafaによって提唱された不変量で、3次元カラビヤウ多様体上の曲線を数えるGromov-Witten (GW)不変量やPandharipande-Thomas (PT)不変量と等価になると期待される不変量である。一方、GV不変量を数学的に正しい形で定義するのは,これまで大きな問題であった。2001年に細野・斎藤・高橋がその数学的定式化を与えたが、彼らの定義がGW不変量と整合しないことは当初から知られていた。より近年になって、2012年にKiem-LiがGV不変量の数学的定式化を消滅サイクル層を用いて与えたが、彼らの定義が正しいことを示唆する根拠は希薄であった。今年度の我々の研究によって、Kiem-Liが定義したGV不変量が予想されるGW不変量との等価性を満たさないことが示された。そこでKiem-Liの定式化を修正して、我々は新たなGV不変量の定義を導入した。更に我々が定義したGV不変量と代数曲面上の標準束上のPT不変量が、曲線の数値類が既約である場合に等価であることを証明した。この結果は我々の定義の妥当性を示す大きな根拠を与えている。以上の結果は論文「Gopakumar-Vafa invariants via vanishing cycles」として書き上げ、プレプリントとしてarXivに公表している。今後、我々が定義したGV不変量の変形不変性の証明、より複雑な状況下でのPT不変量との整合性などを示していく必要がある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

3次元代数多様体上のBogomolov-Gieseker型不等式予想については曲面と曲線の直積の場合に少し進展があったものの、決定的な結果を得るには至らなかった。一方、Gopakumar-Vafa不変量についてMaulik氏と共同で研究を行い、Kiem-Liの定義が正しくないことを示したこと、また新たなGV不変量の定義を導入できたことは思いがけない進展であった。この結果によってGV不変量のより深い理解が得られたことになる。よって、総合的にはおおむね順調に進展していると判断できる。

今後の研究の推進方策

3次元代数多様体上のBogomolov-Gieseker型不等式については、曲面と曲線の直積の場合の議論を再考察する。ある種の連接層の2項複体に対する離散的な不変量を構築する必要があるため、その様な不変量の構成を目標にする。数え上げ不変量への応用については、現在Bogomolov-Gieseker型不等式予想が成立することが知られている場合にBridgeland安定性条件の理論を応用する。3次元アーベル多様体に対してはBG型不等式の成立が知られているため、この場合に導来圏の自己同値から誘導されるDonaldson-Thomas不変量の制約について調べていく。この点については現在Georg Oberdieck氏、Dulip Piyaratne氏らと現在議論を進めており、引き続き考察を進めていく。

次年度使用額が生じた理由

他の研究費使用による海外出張や、家庭の事情による出張制限によって計画通り研究費を使用できなかったため。

次年度使用額の使用計画

積極的に海外から研究者を招へいする。また2月から3月にかけてMSRIの集中プログラムに参加するため、その際に旅費を多く使用する計画である。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 5件、 招待講演 5件)

  • [国際共同研究] マサチューセッツ工科大学(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      マサチューセッツ工科大学
  • [雑誌論文] Contraction algebra and invariants of singularities2017

    • 著者名/発表者名
      Zheng Hua and Yukinobu Toda
    • 雑誌名

      IMRN

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Non-commutative thickening of moduli spaces of stable sheaves2017

    • 著者名/発表者名
      Yukinobu Toda
    • 雑誌名

      Compositio Math

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Generalized Donaldson-Thomas invariants on the local projective plane2017

    • 著者名/発表者名
      Yukinobu Toda
    • 雑誌名

      JDG

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Gepner type stability condition via Orlov/Kuznetsov equivalence2016

    • 著者名/発表者名
      Yukinobu Toda
    • 雑誌名

      IMRN

      巻: 2016 ページ: 24-82

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Stable pair invariants on Calabi-Yau 3-folds containing P22016

    • 著者名/発表者名
      Yukinobu Toda
    • 雑誌名

      Geometry and Topology

      巻: 20 ページ: 555-611

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] DT invariants and NC deformations2017

    • 著者名/発表者名
      Yukinobu Toda
    • 学会等名
      Geometry, Derived categories and birational geometry
    • 発表場所
      大阪大学
    • 年月日
      2017-02-20 – 2017-02-23
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Gopakumar-Vafa invariants via vanishing cycles2017

    • 著者名/発表者名
      Yukinobu Toda
    • 学会等名
      Geometry, Analysis and Mathematical Physics
    • 発表場所
      京都大学数学教室
    • 年月日
      2017-02-13 – 2017-02-17
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Gopakumar-Vafa invariants via vanishing cycles2017

    • 著者名/発表者名
      Yukinobu Toda
    • 学会等名
      Geometry of Modui spaces of sheaves and related topics
    • 発表場所
      京都大学数理解析研究所
    • 年月日
      2017-02-02 – 2017-02-02
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Gopakumar-Vafa invariants via vanishing cycles2016

    • 著者名/発表者名
      Yukinobu Toda
    • 学会等名
      Algebraic geometry and Integrable systems
    • 発表場所
      神戸大学
    • 年月日
      2016-12-05 – 2016-12-09
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Gopakumar-Vafa invariants via vanishing cycles2016

    • 著者名/発表者名
      Yukinobu Toda
    • 学会等名
      KMS-MSJ joint meeting
    • 発表場所
      ソウル大学
    • 年月日
      2016-10-20 – 2016-10-23
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2018-01-16   更新日: 2022-02-16  

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