研究課題/領域番号 |
26287003
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
市野 篤史 京都大学, 理学研究科, 准教授 (40347480)
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研究分担者 |
池田 保 京都大学, 理学研究科, 教授 (20211716)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 保型表現 / 周期 / テータ対応 |
研究実績の概要 |
Kartik Prasanna(Michigan大学)と共同で、四元数体上の保型形式と周期、特にJacquet-Langlands対応と絶対Hodgeサイクルの研究を行った。Jacquet-Langlands対応は四元数志村多様体の積上のサイクルにより実現できると予想されているが、その構成は非常に難しいため対応する絶対Hodgeサイクルの構成を目標として研究を行った。Kudla-Millson理論とArthur分類を用いてユニタリ志村多様体上にHodgeサイクルを構成し、それを四元数志村多様体に制限することで得られるHodgeサイクルがTateサイクルであることを証明した。またその論文の執筆を開始した。 Wee Teck Gan(Singapore 国立大学)と共同で、メタプレクティック群の保型離散スペクトルの研究を行った。これはArthurによる古典群の保型離散スペクトルの分類の一般化・Waldspurgerによる重さ半整数保型形式の分類の高次元化に相当する。スペクトルの緩増加部分を精密に記述することに成功し、論文の執筆・投稿を行った。 Shih-Yu Chen(国立台湾大学)と共同で、2次斜交群の生成的保型形式の周期の研究を開始した。周期と随伴L関数の特殊値の関係の精密化を目標とし、吉田リフトを用いた新しい手法を開発した。 Alberto Minguez(Jussieu数学研究所)と共同で、法l表現の分岐則とテータ対応の研究を開始した。複素表現の場合に知られている表現論的現象の数論的記述が法l表現の場合にも拡張できるかどうか、テータ対応を用いて検証を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Kartik Prasannaと行っている四元数体上の保型形式と周期の共同研究では、Jacquet-Langlands対応と絶対Hodgeサイクル・整周期関係式・Gross-Zagier公式・Beilinson予想など多岐にわたる課題があるが、特にJacquet-Langlands対応と絶対Hodgeサイクルの研究を優先して行った。PEL型とは限らない志村多様体のコホモロジーに現れるガロア表現に対する技術的困難が残っていたが、Kisin-Shin-Zhuの結果を使うことで困難を解消する目処がついた。論文は二部に分けて執筆する予定であり、その第一部の執筆を開始した。 Wee Teck Ganと行っているメタプレクティック群の保型離散スペクトルの共同研究では、実数体の場合の局所理論に対する技術的困難が残っていたが、Kazhdan-Lusztigアルゴリズムを使うことで困難を解消した。この局所理論に関して論文の執筆・投稿を行い、既に論文は受理・電子出版されている。また保型離散スペクトルの緩増加部分に関して論文の執筆・投稿を行った。さらに緩増加の仮定を外しスペクトルを完全に記述するため、階数2の場合に対して詳細な調査を行った。 Shih-Yu Chenと開始した2次斜交群の生成的保型形式の周期の共同研究では、以前に申請者が証明した等式に現れる定数の不定性の解消を主な目標とする。吉田リフトを用いて定数を具体的に計算する目処がついたが、実際に行う必要がある膨大な計算を完了することができなかった。 Alberto Minguezと開始した法l表現の分岐則とテータ対応では、複素表現に対する理論を法l表現の場合に拡張することを目標とする。特に絡作用素・Whittaker積分・局所ゼータ積分に対して詳細な調査を行い、素数lが小さいときに現れる困難を同定した。
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今後の研究の推進方策 |
Kartik Prasannaと行っているJacqeut-Langlands対応と絶対Hodgeサイクルの共同研究では、その論文の第一部の執筆・投稿を行う予定である。さらに結果の高次元化を目標として、保型表現の立場から宮脇リフトとの関連を調査する。また整周期関係式・Gross-Zagier公式の研究に対しても知見が蓄積しているため、これらも継続して研究を進める。 Wee Teck Ganと行っているメタプレクティック群の保型離散スペクトルの共同研究では、階数2の場合に対してスペクトルを完全に記述し、さらにその応用として伊吹山予想を解決することを目標とする。この場合はテータ対応が強力に機能するが、高階数の場合への拡張を念頭に新しい手法の開発を行う。 Shih-Yu Chenと行っている2次斜交群の生成的保型形式の周期の共同研究では、残っている局所積分の計算を逐次実行することで、応用に耐える精密な公式を証明する予定である。さらに、随伴L関数の特殊値の解析的挙動や保型形式のp進的合同など、数論的研究に公式を応用することを目指す。 Alberto Minguezと行っている法l表現の分岐則とテータ対応では、素数lが小さいときに現れる困難に対し、まず低階数の場合に起きる現象を特定することを目標とする。これをもとにして複素表現に対する表現論的現象のイプシロン因子を用いた記述が、法l表現に対して拡張できるかどうか検証する。
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次年度使用額の使用計画 |
30年度が最終年度であるため、記入しない。
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