研究課題/領域番号 |
26287004
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
加藤 周 京都大学, 理学研究科, 准教授 (40456760)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 半無限旗多様体 / 柏原旗多様体 / 非対称マクドナルド多項式 / Demazure加群 / KLR代数 / 幾何学的拡大代数 |
研究実績の概要 |
本年度は昨年度に引き続き半無限旗多様体及びそのシューベルト多様体上の直線束や直線束に近い層の研究を継続し、その一方で通常のKac-Moody代数に付随する旗多様体や幾何学的拡大代数の研究の続きを行った。 半無限旗多様体上の直線束に関しては前年度までの研究で非対称Whittaker系の解を与えること、ならびに直線束を適切に捻ることによりノルムで割った非対称Macdonald多項式の$t = \infty$という通常あまり考えられていない特殊化の幾何学的実現が得られることが分かっていた。この結果の拡張として概ねFeigin-Frenkelの意味での半無限旗多様体(が存在すれば)その上の捻り付き直線束の大域切断として(ノルムで割らない)非対称Macdonald多項式自身が出現することを示した(E.Feigin氏およびI.Makedonskyi氏との共同研究)。 半無限旗多様体の2つのモデルの間の関係はKac-Moody代数に付随する2種類の旗多様体の関係と平行関係にあることに気づいたためあまり研究されていないthick版の旗多様体に関する基礎的な研究を行った。特に、その研究からはthick版の一般のKac-Moody代数において(thick版)Demazure加群が良い振る舞いをする(affine Lie代数の場合には柏原-Shimozono予想)ことが従う。 幾何学的拡大代数の理論においては、対称Kac-Moody代数に対応する場合に量子群の組紐群作用の圏論化である斉藤鏡映関手の理論を整備し、放物型誘導と可換であることを示した。これは柏原-Kim-Oh-Parkの旗多様体の部分多様体の座標環の圏論化の論文において残っていた予想を解決したことになる。 半無限旗多様体の同変K-群およびPieri-Chevalley型の公式(内藤聡氏、佐垣大輔氏との共同研究)についても継続して研究した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
半無限旗多様体の幾何学、マクドナルド多項式などを中心とする通常の旗多様体の理論に対応する半無限旗多様体の基礎理論が、通常の旗多様体や共型場理論との関係も含んだ一つの表現論的な枠組みとして見えてきたように思われる。このような繋がりは漠然と期待されていたものの数学的な定式化には程遠いものあった(少なくとも報告者はこの研究を始めるまで認識していなかった)。そして、きちんと確立した暁にはいまいち繋がりが分からなかった共型場理論、マクドナルド多項式、アフィン・リー代数、量子群の理論などを俯瞰して見据える一つの視座を与えるのではないかと期待している。
このようなことからこのまま研究を進めてゆけば(我々の意味での)半無限旗多様体の理論を表現論的、数理物理学的な命題を証明するためのひとつの大きな理論として確立し、一つの独立分野として確立することも可能ではないかと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は昨年度までの研究をまとめて論文として投稿するとともにその先の話をさらに推進し、より深く半無限旗多様体そのものならびに関連する多様体や理論を表現論的な見地(特に研究計画の軸である幾何学的拡大代数の理論の類似物)から理解することを考えている。 具体的には、アフィン旗多様体の直線束とマクドナルド多項式の対応が様々な(アフィン)旗多様体の間の関係を通じてどのように繋がっているかをあきらかにする。そのことを通じてマクドナルド多項式の新しい理解の仕方を探る。特に、共型場理論や可解格子模型との関係に関してはきちんと注意を向けたい。 それとは別に半無限旗多様体自体の研究も深めたい。今年度までの研究で半無限旗多様体の研究は通常の旗多様体の幾何学の教科書の範囲程度には深まったと考えているが、まだ正標数の場合、そしてより深い交叉理論の研究など通常の旗多様体には存在するが半無限旗多様体には対応物がない定理も多い。このような状況を改善し、また可能であればそれらの応用も探ってゆきたい。 以上の目的を達成するために、3~4人のビジターを京都へ呼ぶとともに関連する分野についての公開の勉強会や定期セミナーを外部から人を招いて行うことを考えている。また、学生たちにも関連する分野についての宣伝を行い、必要があれば本研究費からお金を出して研究集会や勉強会などへ出席してもらうことを考えている。最終年度であるので後半学期には少し長めの海外渡航なども行い、また最後の3月には研究集会を主催するなどして5年間に渡る本研究で得られた視座を宣伝したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 予算のリミットが近づいてきたところで科研費の使用を抑制し過ぎてしまいました。 (使用計画) 貴重な補助金であることは重々承知していますが、額が8,653円ですのでこれにより研究計画に大きな影響を与えることはありません。
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