前年度までにind-modelの半無限旗多様体上の適切な連接層の極限の大域切断として現れるアフィン・リー代数の岩堀部分代数の加群の指標が非対称Macdonald多項式の特殊化であることや、そのような加群が適切な多項式環上の自由加群とみなせることなどが分かっていた。今年度は、そのことをさらに精密化することによって非対称Macdonald多項式の(特殊化の)直交性が対応する適切な圏における二種類の加群たちの間のExtが消えているという事実により解釈されることを確立した(Evgeny Feigin氏、Ievgen Makedonskyi氏との共同研究)。
また、同様の事実に立脚してアフィン・リー代数の可積分表現は全て指標がMacdonald多項式の特殊化で得られる大域Weyl加群によるフィルターずけを持つことを示した。これはADE型の場合にCherednik-Feiginによる予想を大幅に一般化して解決したものといえる。特にそのような記述を通じて1990年代の可解格子模型の研究から生まれた特殊多項式系であるレベル制限コストカ多項式が同時期に研究されていた共型場理論(Wess-Zumino-Witten)模型の記述(Kac-Walton公式)の次数付き類似と見なせることを示した(Segey Loktev氏との共同研究)。さらにこの方向の記述を一般化することで非対称Macdonald多項式を組み込んだRogers-Ramanujan型公式(いわゆるRogers-Ramanujan公式の一つの表現論的解釈の一般化で得られる等式)を初めからその圏化を組み込んだ形で理解する研究を行なった(Ivan Cherednik氏との共同研究)。
これらの研究はコストカ多項式とアフィン・リー代数表現論との関係をアフィン・グラスマン多様体や半無限旗多様体の幾何学を足がかりに研究したものといえる。
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