研究実績の概要 |
昨年度は, 主に次のテーマについての研究を行った (1) 虚数乗法をもつ肥田変形の岩澤理論(原氏との共同研究), (2) Coleman族に関する円分岩澤理論の研究(Nuccio氏との共同研究), (3) 特異点をもつ肥田変形に対するEuler系の理論の研究(下元氏との共同研究), (4) 非可換岩澤代数の代数的な振る舞いの研究(Jha氏との共同研究), (5) 階数>1のEuler系に対する変形の岩澤理論の定式化(Buyukboduk氏との共同研究)
(1)については, CMを持つHilbertモジュラー形式の円分岩澤主予想を適当な条件や予想のもとで示す最初の論文がついに完成に至り投稿した. 最初の好意的な査読レポートを受け取り, 現在修正中である. (2)のNuccio氏との共同研究は, Coleman写像の細かい証明をほぼまだ埋めきった. (3)については最初の論文の掲載が決定し現在はその続編となる第2本目もだいぶ完成に近づいてきている. (4)については, 日本とインドを行き来して急ピッチで最初の論文を完成させた. この最初の論文ではGreenbergやPerrin-Riouによって得られていた可換岩澤加群のtwisiting lemmaの非可換な一般化に成功した. 完成した論文を投稿し, 既に掲載許可が得られた. (5)に関しては, 特にモジュラー形式2つの積からなるモチーフを意識した高階数の理論がまとまり, 論文の作成に取り掛かったところである. また, 1件の国際研究集会講演(東北大学)や日本数学会代数学シンポジウムを含む2件の研究集会講演(静岡大学, 早稲田大学), 国内外での講演(インド, 香川)を通して上記の成果を精力的に発表した. また, 岩澤理論の一般化の枠組みを精査する研究を進めて, 著書「岩澤理論とその展望(下)」にまとめた.
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今後の研究の推進方策 |
Nuccio氏とのColeman変形のColeman写像の構成の論文は, 技術的に困難な箇所が多くだいぶ時間がかかっている. ただ, 今年度でおよそ最後の大きな山場を越えた感はあるので, 論文完成と投稿にこぎつけたい. 現在, 取り組んでいるp進L関数のGSp_4の場合の一般化の研究(Lemma氏との共同研究), 特異点を持つ場合のEuler系の研究(下元氏との研究)なども堅実に進展させたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
p進L関数に関する研究が進んで, 次年度の秋に研究集会を行うことも新たに決定するなど, 当初予期しなかった研究上の動きがあった. そのため, 次年度の集会開催の直前により多くの研究打ち合わせを行うことが, より効率的かつ有効に研究費を活かせると判断した.
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