研究課題/領域番号 |
26287007
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
吉岡 康太 神戸大学, 理学研究科, 教授 (40274047)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 安定性 / 複体 / モジュライ |
研究実績の概要 |
Enriques曲面のモジュライは10次元であり、その中でgeneralなものは被覆K3曲面のピカール数が10になることが知られている。このようなgeneralなEnriques 曲面上の安定層のモジュライ空間は位相的不変量に関するある種の条件下で非特異多様体になることが分かっている。本年度はこのようなモジュライ空間について、多くの場合にピカール群を計算した。 K3曲面やアーベル多様体など標準束が自明な多様体について、多くの非自明な導来同値の例が知られている。既約Symplectic多様体はK3曲面の高次元類似であるので、非自明な導来同値があることが期待される。双有理同値な多様体上の導来同値の構成はいくつか知られているので、双有理同値でない場合に例を構成するのは興味深い問題である。そこでMeachan,Mongardiと共同で導来同値だが双有理でない既約symplectic多様体の例を構成した。具体的にはK3曲面上の点のHilbertスキームの間の導来同値を利用した。この導来同値性はPloogにより解決されているので、双有理同値性を調べることが問題となる。この問題を向井格子の算術的な解析(古典的2次形式の問題に帰着される)をすることにより解決した。またK3曲面上の安定層のモジュライ空間についてBrill-Noether軌跡を考察した。とくにピカール数が1のK3曲面上で階数が3以下の場合にモジュライ空間の一般元についての層係数コホモロジー群を計算した。手法はBridgeland安定性とその壁越え現象を利用するもので、rigid層による壁の構造解析が重要な役割を果たす。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既約symplectic多様体について興味深い導来同値を構成し、またBrill-Noether軌跡についての新たな知見を得たから。
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今後の研究の推進方策 |
Enriques曲面上の安定層のモジュライ空間については、得られた結果を論文にまとめる。Brill-Noether軌跡について、さらに研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度末に思いがけず得られたBrill-Noether軌跡に関する数値計算の結果を整理する必要があった。整理ののち専門家と得られた結果について議論する。またそのための旅費として使用する。
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次年度使用額の使用計画 |
30年度が最終年度であるため、記入しない。
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