研究課題/領域番号 |
26287010
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山口 孝男 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00182444)
|
研究分担者 |
太田 慎一 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00372558)
磯崎 洋 筑波大学, 数理物質科学研究科(系), 教授 (90111913)
塩谷 隆 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90235507)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | アレクサンドロフ空間 / 測度距離空間 / 相転移性質 / スペクトル理論 / 勾配流 |
研究実績の概要 |
・アレクサンドロフ空間の任意の点からの距離関数が正則であるような距離球が、SLC(強リプシッツ可縮であることを証明した。また、アレクサンドロフ空間の「良い被覆」という概念を、任意の空でない有限交叉が錐的でSLC であるという条件により定め、任意のアレクサンドロフ空間が局所有限な良い被覆をもつこと、良い被覆の脈体(nerve)と同じホモトピー型をもつこと、および、曲率の下限、直径の上限、体積の下限が一様に押さえられたn次元アレクサンドロフ空間が、グロモフ・ハウスドルフ距離に関して安定的な良い被覆をもつことを証明した。 ・測度距離空間の列の相転移性質について,オブザーバブル直径を用いた必要十分条件を得た.これを用いて代表的なリー群が相転移性質をもつことを証明した.また,離散的な測度距離空間のl_p積のオブザーバブル直径の評価を行った.さらに別の研究として,閉曲面の等径定数の評価を与えた. ・無限遠において一般的な挙動を許す非コンパクトなリーマン多様体、さらにオービフォールドに対してスペクトル理論を構築し、S行列から多様体を再構成する逆問題を解決した。六角格子等の物理的に重要な例を含む格子上のシュレーディンガー作用素に対して散乱の順問題を解決した。 ・Miklos Palfia氏(京都大学)と共同で距離空間上の弱凸関数の勾配流を研究し,CAT(0)空間で知られていた収縮性などの性質を,論文中で「可換性」と呼んだ空間が「リーマン的」であることの本質である概念を導入することで,CAT(1)空間に拡張した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
勾配流の張り合わせなどの道具を整備し、アレクサンドロフ空間のリプシッツ・ホモトピー構造解明への手がかりを得ることができた。またアレクサンドロフ空間の良い被覆の概念をつくり、その安定性や有限性を示したことにより、脈複体によるアレクサンドロフ空間のリプシッツ・ホモトピー構造解明の別の手法を与える可能性が生じた。また非コンパクトなリーマン多様体、さらにオービフォールドに対してスペクトル理論を構築したことにより、崩壊する非コンパクト・リーマン多様体のスペクトル逆問題解明への可能性が高まった。また測度距離空間の列の相転移性質について,代表的なリー群が相転移性質をもつことが分かり、将来これを一般化することにより、新しいタイプの収束理論を創出する可能性が生まれた。
|
今後の研究の推進方策 |
アレクサンドロフ空間が良い被覆の脈体にリプシッツの意味でホモトピー同値であることを証明して行く。直接的にアレクサンドロフ空間の上でホモトピーをつくる手法より、脈体と空間の積構造を考えて、そこから複体への射影の写像柱を介して両者の間のリプシッツ・ホモトピーを構成する手法を追求して行きたい。また崩壊する非コンパクト・リーマン多様体のスペクトル逆問題解明とァレクサンドロフ空間の弱い意味での2回微分可能性を用いてスペクトル逆問題を進展させて行きたい。境界つき3次元アレクサンドロフ空間の崩壊理論の論文執筆を完成させ、4次元アレクサンドロフ空間の崩壊理論にも取り組む。また境界つきリーマン多様体の崩壊理論もその端緒を開いていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
事情により共同研究者である三石史人氏の京都大学招聘の数が制限された。またYaloslav Kurylev氏を京都大学に招聘する予定であったがスケジュールの関係で実現しなかった。
|
次年度使用額の使用計画 |
共同研究者である三石史人氏を年間通して一定のペースで京都大学に招聘する。またYaloslav Kurylev氏を京都大学に招聘するか、または研究代表者がロンドンにKurylev氏を訪問して共同研究する予定である。また次年度は、MSRI(バークリー、米国)に2ヶ月の滞在の予定で、その間の往復旅費などに使用する予定である。
|