研究課題/領域番号 |
26287011
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研究機関 | 兵庫教育大学 |
研究代表者 |
小池 敏司 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (60161832)
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研究分担者 |
塩田 昌弘 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 名誉教授 (00027385) [辞退]
福井 敏純 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (90218892)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 代数的特異点 / ナッシュ曲面 / 同程度特異性 / ブローナッシュ自明性 / 半代数的同値 / 相対ジェットの十分性 / 点列選択性性質 / リプシッツ不変量 |
研究実績の概要 |
平成29年度に実施し、得られた研究成果は以下のものである。 (1) 今年度の研究実施計画の中で一番目に掲げていた問題は、「与えられた2次元ナッシュ曲面族に対して、各曲面の主部の族はブローナッシュ自明で、その自明性が埋め込まれた曲面の族としてはブロー半代数的自明となるように拡張可能な自明性に関して有限性が成り立つか」というものである。この問題に対して、肯定的な結果を示す証明の筋道を与えた。 (2) 昨年度、海外共同研究者でフランス・レンヌ大学の K. Bekka 氏との共同研究において、与えられた閉集合に付随する相対ジェットの位相十分性とV十分性に対するロジャシェビッチ不等式を用いた特徴付けを与えていた。今年度は、それらの特徴付けを用いて、滑らかな関数の位相有限既定性と写像のV有限既定性の特徴付け、滑らかな関数の無限ジェットの位相十分性と写像の無限ジェットのV十分性の特徴付けを与えた。 (3) 海外共同研究者でオーストラリア・シドニー大学の L. Paunescu 氏とは、近年、特異集合に対して、点列選択性性質などの接方向的性質を用いたリプシッツ不変量の導入を行い、螺旋や振動関数を分類する研究を行って来た。今年度は、多様体に対する接束の概念を特異集合の場合に一般化した接方向束の概念を導入し、それに付随した新たな接方向的性質・概念を考案することにより、より多くの振動関数を区別した。また、それらの性質・概念を代数的特異点族の同程度特異性にも応用している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進展している理由としては、まず「研究実績の概要」欄 (1)で述べたように、今年度の一番目に掲げていた課題について、肯定的な結果を示す証明の筋道をつけられたことが挙げられる。 また、「研究実績の概要」欄 (2)については、有限ジェットの十分性の特徴付けだけでなく、有限既定性や無限ジェットの十分性までの特徴付けまでを行うことができ、それらの新しい結果を昨年度に得ていた結果に関する共著論文に組み入れて、一つの長編論文としてまとめ上げることができた。この論文は、現在、欧州の数学雑誌に投稿中である。 更に、「研究実績の概要」欄 (3)については、特異点における接空間にあたる概念である接方向的集合の大域化として、接束の概念を導入することができ、それに付随する性質・概念を用いて、大域的な新しいリプシッツ不変量を導入することができた。その不変量は、より多くの振動関数の区別を可能にしている。接方向的な性質に関する結果のこれらの大域化については、一つの論文としてほぼ完成しており、次年度に欧米の数学雑誌に投稿予定である。
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今後の研究の推進方策 |
「特異点を許す任意の次元のナッシュ集合から一般次元へのナッシュ多様体へのナッシュ写像族に現れる半代数的タイプは、どのような条件のもとに有限になるか」という問題に取り組む。具体的には、その付随的な条件の定式化を行うことが最初の重要な課題になり、その次に定式化された問題を示すことが次の課題になる。一昨年度、当時の研究分担者の塩田昌弘氏との共同研究において、「特異点を許す2次元ナッシュ曲面から一般次元のナッシュ多様体へのナッシュ写像族に現れる半代数的タイプの個数は、定義域のナッシュ曲面が孤立特異点を許す場合には有限であることを示し、非孤立特異点を許すナッシュ曲面の場合には位相モジュライが現れる例を構成した。」これらの結果の証明を詳細に検討することにより、課題の付随的な条件の望ましい定式化に取り組む。分担者の塩田氏が、この1月に急逝したため、フランスの実代数幾何学者との議論を通して、この研究に進めることになる。 また、今年度行った、シドニー大学 L. Paunescu 氏との共同研究「特異空間に対する接方向的性質を用いた大域的リプシッツ不変量の導入」を更に押し進めると同時に、それらの研究成果の「代数的特異点族の同程度特異性問題」への応用を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
学術研究助成基金助成金において多くの次年度使用額が生じた一番大きな原因は、年度末の2月に本研究の推進のためにフランス渡航を予定していた、研究分担者の名古屋大学多元数理科学研究科の塩田昌弘氏が、1月中旬に急逝されたことによる。そのため、塩田氏に配分していた経費が、そのまま次年度使用額として残った。また、それ以外には、研究代表者が中国を訪問したときの航空券が、何故か通常の4分の1の額で購入できたことも含まれる。 上記のことにより生じた次年度使用額については、本研究においてモチーフ型不変量導入問題を担当している研究分担者の埼玉大学の福井敏純氏に配分する。この担当分野は、福井氏が中心となり、フランス人実代数幾何学者達との共同研究を通して推し進められて来た。この分野のより密接な共同研究をはかるため、相互訪問を行うための旅費として、その配分金は用いられる。
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