研究課題
大規模相互作用系とは,もともと統計物理学の研究において用いられる各種の数理モデルの総称であり,莫大な自由度を持つ系である。様々な現象の解析においては階層性が重要な役割を果たす。すなわち,巨視的な視点からは,各種の現象は偏微分方程式によって記述されることが多いが,その背後にあるのが大規模相互作用系である。以下,本年度の研究実績からいくつか具体的に述べる。正方格子上の大規模相互作用粒子系の典型例として,Glauber-川崎力学あるいはGlauber-零レンジ過程がある。今年度は後者の系,すなわち生成消滅のあるランダムウォーク粒子の集団について,粒子密度が濃い領域と薄い領域への相分離が起き,相分離界面は平均曲率運動することを示した。前者の系より数学的な解析は困難であり,Boltzmann-Gibbs原理を示すことが重要である。また,2種の異なるタイプの粒子を持つ相互作用粒子系において,異なる種の粒子が出会ったときに両者がともに高い確率で消滅しあう状況の下で,異種粒子の分離が起き,その分離界面は2相Stefan 自由境界問題に従うことを示した。さらに,複数個の保存量を持つ零レンジ過程から,適当なスケール極限の下で,発散項を含む特異な確率偏微分方程式である多成分KPZ方程式を導出した。また,確率点場を平衡状態に持つ時間発展の構成に,その対数微分は欠かせないが,ランダム行列理論に関連して生ずる広いクラスの1次元の行列式過程について対数微分を計算することに成功した。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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