研究課題/領域番号 |
26287016
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宍倉 光広 京都大学, 理学研究科, 教授 (70192606)
|
研究分担者 |
稲生 啓行 京都大学, 理学研究科, 准教授 (00362434)
上田 哲生 京都大学, 理学研究科, 名誉教授 (10127053)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 力学系 / 分岐 / カオス / フラクタル / くりこみ |
研究実績の概要 |
宍倉は、David Marti Pete氏との共同研究で、Bishopの与えたEremenko-Lyubich型超越関数の遊走領域の擬等角折り込みによる構成法について詳細に検討し、その証明の問題点を指摘し、より簡明な構成法を考案した。この方法によれば、Eremenko-Lyubich型かつ有限位数の超越関数で遊走領域を持つものを構成することが可能になった。また、宍倉は、上記の構成でも使われる擬等角写像の評価を与え、擬等角写像の1点ごとの微分可能性をより簡明に証明する方法を与えた。また、複素1次元Arnold族のfinger状分岐集合については、2次元以上のHenon写像の族のパラメータ空間でも同様の集合が観察されており、Bedford-Smillie-Uedaの放物型分岐の理論を強化することにより、この集合の発生を説明できることが期待される。さらに、puzzle分割・parapuzzle分割を用いた複素力学系の分岐の研究については、Berger他のとの共同研究を開始し、Lattes族に関するReesの定理をこの方法で再証明することに取り組んでいる。 上田哲生は、コンパクト複素多様体上のアフィン束がスタイン多様体となる条件を調べ,さらに,その上の(強)多重劣調和函数の存在と増大度に関する条件とアフィン束上の葉層構造との関連を調べた(小池貴之との共同研究).また,複素2次正則写像の半放物型不動点のファトゥ座標と,この分岐によって生ずる吸引不動点の線形化座標を自然に結びつける構成について研究した(E.ベッドフォードとの共同研究). Mandelbrot集合の反正則版であるtricornに対しては、奇数周期の双曲成分のほとんどがtricornの外からは到達不可能であろうと予想される。にも関わらず、稲生啓行は、例外的に到達可能な奇数周期の双曲成分が無限個存在することを示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は特に超越関数の遊走領域の構成の問題(David Marti Pete氏との共同研究)と、複素力学系の構成に必要な擬等角写像の評価を中心に研究を行った。どちらも論文が完成し、投稿済みで、擬等角写像の評価に関する論文は、既に掲載された。 また、複素1次元Arnold族のfinger状分岐集合については、2次元以上のHenon写像の族のパラメータ空間でも同様の集合が観察されており、Bedford-Smillie-Uedaの放物型分岐の理論を強化することにより、この集合の発生を説明できることが期待される。 さらに、puzzle分割・parapuzzle分割を用いた複素力学系の分岐の研究については、Berger他のとの共同研究を開始し、Lattes族に関するReesの定理をこの方法で再証明することに取り組んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は、複素1次元Arnold族のfinger状分岐集合について、ポーランドのDavid Marti Pete氏との共同研究でその構造の定量的な評価と論文の完成を目指す。さらに、それを、2次元以上のHenon写像の族のパラメータ空間に拡張することを目指す。そのためには、Bedfird-Smillie-Uedaの放物型分岐の理論を強化することが必要になる。彼らの理論では、1次元的に潰れた状態が極限として現れたが、双曲性などの評価を与えるためには、摂動後の状態を無限小の動きとして加味していく。 さらに、1次元複素力学系のpuzzle分割・parapuzzle分割を用いた複素力学系の分岐の研究については、Lattes族に関するReesの定理を、Bernardのpuzzleを用いて再構成し、それを高次元の力学系への拡張の第1歩とする。このために、フランスのBerger他のとの共同研究をを行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
年度途中で、David Marti Pete氏が日本学術振興会会特別研究員の任期が終了し、ポーランドに移籍したため、共同研究のためのディスカッションがやりにくくなった。2019年度には、研究集会等で、彼と会ってAronold族のfinger状集合の定量的評価に関する共同研究を続ける予定である。また、Henon族の放物型分岐に関するBedford-Smillie-Uedaの理論を検討したが、fingerの問題に適用するためには、一次元に潰れる不安定多様体から、横断的方向へのより精密な無限小成分の摂動効果を評価する必要がわかり、この部分の研究をこれから行う必要がある。 また、1次元複素力学系のpuzzle分割・parapuzzle分割を用いた複素力学系の分岐の研究については、Berger氏より、共同研究の提案があり、Lattes族に関するReesの定理のpuzzleを用いた証明を与える予定である。
|