研究課題/領域番号 |
26287018
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
山田 泰彦 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00202383)
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研究分担者 |
太田 泰広 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10213745)
野海 正俊 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80164672)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | パンルヴェ系 / モノドロミー保存変形 / 差分系 / ラックス形式 / qガルニエ系 |
研究実績の概要 |
昨年度の実績報告書において掲載決定としていた、梶原健司(九大)・野海(分担者)・山田(代表者)の共同執筆による離散パンルヴェ方程式に関する総合報告"Geometric Aspects of Painleve equations" がJ.Phys誌のtopical reviewとして出版された(2017年1月)。また、長尾秀人(明石高専)と山田との共同研究による、パデ法を用いたq-差分ガルニエ系に関する投稿中の論文が、Funkcialaj Ekvacioj誌に掲載決定となった。 本年は、国内外の研究集会において講演の機会が多数あり、一部都合のつかないものもあったが、可能な限り対応し、国内研究集会の一般講演2件・招待講演1件、国際研究集会の招待講演5件など、成果発表と関連分野の情報収集に努めた。 こうした研究発表と平行して、q-ガルニエ系の研究をさらに推進し幾つかの成果を得た。特に、T.Suzukiによる高階q-差分パンルヴェ系とq-ガルニエ系との関係がより明快な形で定式化できるようになり、さらに、Kajiwara-Noumi-Yamada(2002)においてq-差分KP方程式の相似簡約により構成されていた高階パンルヴェ系との関係も明らかになった。また、Noumi-Tsujimoto-Yamada(2013)によるパデ法に基づくE8型楕円差分パンルヴェ系の構成法を拡張し、この系の自然な多変数への拡張を構成した。 これらの結果、離散モノドロミー保存変形理論およびその自励的極限に現れるスペクトル曲線と、ゲージ理論・弦理論で扱われるトーリック図形との対応がより一般的かつ明瞭となり、モノドロミー保存変形理論の量子化、およびゲージ理論・弦理論への応用という目標にさらに近づくことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
梶原・野海・山田による離散パンルヴェ方程式のラックス形式を含めた幾何学的理論、ならびに長尾・山田によるq-ガルニエ系の研究が着実に進展し成果を上げている。これらの研究は、可積分系やモノドロミー保存方程式の分野はもちろん、数理物理などの関連からも広く興味を持たれており、国内外の多くの研究集会において成果発表の機会が増えた。また、シドニー大学において連続講義も行った。これらの研究集会等は、広い関連分野の最新の研究動向探る機会ともなり、その意味でも有益であった。 特に本年度の研究では、q-ガルニエ系とT.Suzukiによる高階q-差分パンルヴェ系との関係について明快な定式化が得られ、その過程で、Kajiwara-Noumi-Yamada(2002)においてq-差分KP方程式の相似簡約として得られた高階パンルヴェ系との関係が明らかになった。また、Noumi-Tsujimoto-Yamada(2013)によるパデ法に基づくE8型楕円差分パンルヴェ系の構成法を拡張し、この系の自然な多変数への拡張を構成した。q-差分KP方程式系のポアソン構造ならびに量子化については、参考となる先行研究があり、これらとの関連が明らかになったことは、モノドロミー保存変形理論の量子化に向けた重要な前進と言える。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度のこの項の最初に掲げたq-差分一般超幾何関数とq-アペル・ローリセラ関数との関係についての考察では、それらの共通の一般化が構成できたので、それについて論文を準備すると共に、それを応用したモノドロミー保存変形の構成も適当な段階で論文にまとめたい。 パデ法の応用に関しては、楕円差分版の多変数的拡張に対しても、q-差分ガルニエ系で用いた表現方法を用いることにより、大変簡明な形に整理できるようになってきた。これらの結果は、Ormelod-Rainsにより最近提唱された楕円ガルニエ系との関連からも興味深い対象であり、できるだけ速やかに結果を整理して論文にまとめたい。 q-KP方程式の簡約系の量子化については、G.Kurokiの以前の研究やR.Inoue等によるクラスター代数と関連した最近の研究などの先行結果を活用して研究を進展させる。また、ゲージ理論・弦理論の関連する研究も顕著な進展が続いており、今後も、名古屋大や大阪私立大の研究グループ等との情報交換に努め、本研究の進展に繋げる。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度後半に研究代表者自身の国際研究集会等での講演が集中したため、その時期に想定していた研究集会を開催する時間的な余裕がとれなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
研究の前線が広がっていることを考慮し、数理物理も含めた広い分野から本研究課題に関連する話題について、テーマを絞った小規模のセミナーや研究集会を、神戸大学を拠点として機動的に開催する。これにより、これまでの成果を発展させ、本課題の進展に繋げる。
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