研究分担者 |
倉田 和浩 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (10186489)
川上 竜樹 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20546147)
池畠 優 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90202910)
宮本 安人 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 准教授 (90374743)
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研究実績の概要 |
昨年度に引き続き, 主な研究目的は広く偏微分方程式の初期値問題や境界値問題において, 解の幾何学的挙動と領域の幾何学的情報との関係を明らかにすることであった。まず代表者の主な成果を述べる。異なる導電率をもつ2種以上の複合媒質に伴う不連続な導電率を記述する楕円型作用素に対する導電場方程式について, 同心球からなる2種複合媒質は1962年 Z. Hashin によって外部一様電場に影響を与えない中性導体であることが知られていた。この研究では3次元空間において初めて, 中性導体としての同心球の特徴付けに成功した。成果を論文 H. Kang, H. Lee, and S. Sakaguchi, Annali della Scuola Normale Superiore di Pisa, 掲載受理印刷中, で発表した。
以下分担者の成果を述べる。倉田は空間2次元での異成分間斥力相互作用を持つ2成分 Bose-Einstein 凝縮現象の数理モデルで, 2乗積分ノルムを制限した変分問題を研究し, 散乱長パラメータを臨界値に近づけた際に起こるエネルギー最小解のトラップポテンシャルの最小値集合での凝集現象の数学解析を行った。川上は幾つかの半線形楕円型方程式及び非線形放物型方程式の解全体の構造を研究し, 成果を5つの論文で発表した。池畠は時間領域における Maxwell 方程式系等で記述される波の物体散乱の逆問題において囲い込み法を展開し, 物体の幾何学的情報を抽出・評価する方法を提出し, さらに囲い込み法をLaplace方程式で記述されるスポット溶接に起源をもつ逆問題において展開し, 成果を3つの論文で発表した。宮本は半線形楕円型方程式の解全体の構造を分岐理論を用いて研究し, 特に非線形項の主要部が優臨界の冪の場合の球領域におけるディリクレ問題の正値解の構造を研究し論文で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題に対して相応の進展があった。特に, 異なる導電率をもつ2種以上の複合媒質上の導電場方程式に対して, 3次元空間で初めて, 中性導体としての同心球の特徴付けに成功した。これにより, 異なる導電率をもつ2種以上の複合媒質に伴う不連続な導電率を記述する楕円型作用素に対する初期値問題や境界値問題において, 解の幾何学的挙動と領域の幾何学的情報との関係に対する新たな展開が期待される。
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