研究実績の概要 |
主な研究目的は広く偏微分方程式の初期値問題や境界値問題において, 解の幾何学的挙動と領域の幾何学的情報との関係を明らかにすることであった。 代表者坂口は技術的困難さのために未解決であった空間2次元の初期値問題の場合に, 相異なる熱伝導率をもつ3種の複合媒質上の熱拡散を考えて,2相熱伝導体の中で同心球の不変等温面による特徴付けを与えた。未知介在物を同定する偏微分方程式の逆問題の視点と相異なる熱伝導率を持つ常微分方程式の2つの解の比較の理論により技術的困難さを克服した。さらに, 各時刻で熱流の法線方向成分が曲面上一定であるという不変等熱流面の概念を導入し, 同心球の不変等熱流面による特徴付けを与え, 論文 L. Cavallina, R. Magnanini and S. Sakaguchi,“Two-phase heat conductors with a surface of the constant flow property", arXiv:1801.01352v1, を仕上げ学術雑誌に投稿した。 分担者倉田は反応拡散系に付随する非線形変分問題の最小化解の安定性やエネルギー評価を得た。川上は代表者坂口と相似な等位面を持つ熱方程式の解の特徴付けに端を発する研究課題の今後の発展可能性を捉えた。分担者宮本は優臨界の増大度を持つ半線形楕円型方程式の球領域におけるディリクレ問題の正値球対称解のなす分岐構造を研究し,指数関数より早く増大する非線形項を持つ場合について,特異解の存在を示し, 古典解との交点数を明らかにした。連携研究者池畠は時間領域における Response operator のグラフ上の1点を用いた囲い込み法を熱弾性体の振動の支配方程式で記述される物体内空洞逆問題において実現した。代表者の指導学生 Cavallina は2相ねじり弾性問題の同心球の安定性を調べた。
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