研究課題/領域番号 |
26287024
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
二宮 広和 明治大学, 公私立大学の部局等, 教授 (90251610)
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研究分担者 |
飯田 雅人 宮崎大学, 工学部, 教授 (00242264)
矢崎 成俊 明治大学, 理工学部, 准教授 (00323874)
高坂 良史 神戸大学, 海事科学研究科(研究院), 准教授 (00360967)
谷口 雅治 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (30260623)
三竹 大寿 広島大学, 学内共同利用施設等, その他 (90631979)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 自由境界問題 / 特異極限問題 / 反応拡散系 / 国際研究者交流(台湾,フランス,アメリカ) |
研究実績の概要 |
本研究課題では,自由境界の変形とそれがもたらす役割を解明する数学的な基盤作りを行うため,研究計画に基づき,(1)「界面方程式と場の方程式の結合系から形状に関する情報を得る手法の開発」,(2)「形状のもつ性質とその制御」,(3)「反応拡散系と自由境界問題の関係」の3つのテーマについて研究を行った. まず,(1)について説明する.Chenおよび分担者・高坂との共同研究により,解析しやすい自由境界問題を導出し,2次元進行スポット解の構成に成功した.この方程式系は,移動境界の法線速度が場の変数によって決まる界面方程式と移動領域に依存する場の方程式よりなる結合系となっている.この結合系についての数学的な理論の構築を行ってる.二宮・高坂・物部により一般的な枠組みで結合系の時間局所解の存在を等高面法とCauchyの折れ線近似を用いて試みたが,現在のところ,成功には至っていない.また,研究分担者・三竹は,退化粘性Hamilton-Jacobi方程式に対して,非線形随伴法を利用した漸近解析に取り組んだ.その結果,革新的な方法論の確立に成功し,非線形随伴法を利用することで,エネルギー保存則を導き,時間に対する漸近的単調性を示すことに成功した. (2)については,進行スポット解の安定性を数値計算によって調べた.また,回転スポット解の構成や自発的スパイラル形成のメカニズムについての解析的研究を行った.また,連携研究者・物部との共同研究により,細胞運動のモデルの進行スポット解を構成した.外部刺激の条件を緩和し,凸領域の場合に拡張することにも成功し,論文を投稿中である. (3)としては,反応拡散系の解の構成を行った.研究分担者・谷口は,Allen-Chan-Nagumo方程式の非対称な多次元進行波解の構成に成功した.また,研究分担者・飯田と反応拡散系の特異極限問題についてレビュー論文をまとめた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
テーマ(1)では,非局所型Hamilton-Jacobi方程式の局所解の構成は,現在のところ成功していない.現在のところ,初期値に特殊な条件を課した場合には,局所解の構成に成功している.この条件を外した場合に,この手法は使えないので,2つのアプローチにより,証明を試みている.また,結合系の2次元進行スポット解,多次元進行スポット解,V字進行波解などの特殊解の構成に成功している. テーマ(2)は,結合系の進行スポット解のまわりの線形化作用素の固有値を数値計算により調べた.また,細胞運動モデルにおける進行波解の構成に成功した.さらに全域解と障害物の形状の関係についての数学的証明を分担者・矢崎と行っている.テーマ(1),(2)は研究計画に基づき,順調に研究が進んでいる. テーマ(3)については,FitzHugh-Nagumo型反応拡散系の進行スポット解の構成する予定であったが,まだ構成するに至っていない.数値計算より固有値の状況と結合系の関係については,ある程度の知見が得られた.これにより,収束を証明する際の問題点が明らかになってきた.また,反応拡散系の特殊解・全域解の構成については順調に進んでいる. 以上より,概ね順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
テーマ(1),(2)は順調に進んでいるので,概ね計画に基づき着実に遂行していく.研究実績で述べたように,結合系の進行スポット解のまわりの線形化作用素の固有値を数値的に調べた.この知見をテーマ(3)で用いる予定である.また,テーマ(2)では,障害物などの幾何学的情報が全域解に与える影響についても調べる予定である. テーマ(3)のFitzHugh-Nagumo型反応拡散系の進行スポット解の構成については,まだ成功していないが,テーマ(2)の固有値の数値計算を参考にすることにより,問題点が少しずつ明らかになってきた.まず,空間次元が1次元の場合は,比較的容易に扱えると思われるので,その場合に証明を試みて,その問題点・困難な点を調べることにする.ここで得られた知見に基づき,多次元空間の場合の証明を行う予定である.また,反応拡散系の急速反応極限で取り扱える非線形項は限られたものが多かったが,その範囲をより広いものに拡張していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
2014年度に採用しようと考えていたポスト・ドクターが明治大学のポスト・ドクターに採用されたため,次年度に繰り越した.
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次年度使用額の使用計画 |
明治大学のポスト・ドクターに採用されたため,研究計画には支障がない.2015年度以降に採用する予定である.
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