本研究課題の目的は、系外惑星(太陽以外の恒星をめぐる惑星)を直接観測するための高コントラスト観測システムを開発することである。これにより、既存の地上大型望遠鏡や将来のスペース望遠鏡での系外惑星探査を目指す。系外惑星を直接観測するためには、観測の妨げとなる明るい主星(恒星)光を強力に除去しなければならない。恒星光を除去する有力な手法として、焦点面位相マスク法が提案されている。焦点面位相マスク法は、望遠鏡瞳が円形であれば、点光源と見なせる恒星を理論上完全に除去することができる。しかしながら、一般的な望遠鏡は、望遠鏡瞳に副鏡とその支持機構の影が映りこんでしまい、これが恒星除去性能を著しく劣化させてしまう。この問題を解決するため、本研究課題では「瞳再配置法」を提案し、その原理実証実験を推進した。
まずH26~27年度に、瞳再配置法の室内シミュレータを構築した。H28年度は、構築したシミュレータを用いた室内実証実験から、瞳再配置法の有用性を定量的に評価した。その結果、瞳再配置法により恒星除去性能が向上すること実証し、また使用した光学素子の収差により性能が制限されていることを示した。光学素子に収差が存在すると、恒星光を強力に除去できず、スペックル状の恒星ノイズが惑星観測を妨げてしまう。この問題を解決するため、本研究課題では、新たな技術「スペックル相関除去法」にもとづく系外惑星の偏光観測法を提案した。H28年度は、計算機シミュレーションにより、系外惑星の偏光観測における光学収差の影響を評価した。さらに、本研究課題のキーデバイスである液晶空間光変調器を用いた偏光観測法、さらには光波面補正により恒星スペックルをアクティブに除去する技術の開発も推進した。
これらの研究成果により、副鏡の影をもつ一般的な望遠鏡においても高い恒星除去性能が得られる観測システム実現に向けた見通しを得ることができた。
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