研究課題
本研究は地上大型望遠鏡の補償光学装置として、多天体の同時補償観測を実現するトモグラフィー多天体補償光学の実証と性能評価を行うことが目的であった。その中でも、特にトモグラフィー推定の適用視野の拡大を目的とした、複数の時間ステップの測定量を用いる複タイムステップ-トモグラフィー法を我々は提案しており、すばる望遠鏡への持込み多天体補償光学実験装置 RAVEN による試験観測のデータを用いて、新しい手法の確立と性能評価を行った。実験室で行った性能評価では新しい手法が有効であることを確認しており、この結果については手法の提案と共に論文での報告を行った。新しい手法が有効に働くためにはまず観測時の大気揺らぎの高さ分布をリアルタイムに推定する必要がある。我々は試験観測時のデータを用いて SLODAR の手法による大気揺らぎの高さ分布の測定手法を確立した。またこの解析結果から、マウナケア山での大気揺らぎプロファイルについても情報を得た。その結果、地表層付近の大気揺らぎ成分の寄与が大きく、広視野の補償光学を実現する上で理想的なサイトであることを 8m 望遠鏡を用いた 3 分角という中程度の視野の補償光学の波面測定データから初めて実証し、国際研究会での発表と、論文での報告を行った。SLODAR を用いた大気揺らぎ分布の推定を取り込んで、複タイムステップ-トモグラフィー法を適用した補償性能について、試験観測時に得られた試験データに適用して評価した結果、従来の手法よりも良い補償が実現できることを確認した。また、試験データから逆に構成した制御行列とも整合性が取れていることも確認した。これらの結果については論文での報告を予定している。さらに、科学的観測への展開として、銀河の内部構造を分解して、内部の星形成の様子や星の分布について解析を行う手法を開拓し、国際研究会において発表を行った。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 6件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
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