研究課題
本研究では、中性水素原子ガスが放射する21cm線中に吸収線として現れる冷たいHIガスを定量するために、新しい解析手法である「速度分散法」を開発し、研究を遂行してきた。しかし、平成28年度末までに、この方法を用いても定量が困難な冷たいHIガスが存在することが明らかになった。このようなHIガスは、輝度温度の異なる3成分以上の速度成分が視線方向に複雑に重なったもので、おうし座分子雲のCOデータおよび21cm線データの精密解析している途上で発見した。このようなHIガスは、ある時には吸収線として現れるが、ある時には輝線(放射)として現れる。個々の速度成分の視線速度を推定することは比較的容易だが、そのスピン温度や光学的厚さを精度よく見積もることは、困難であることがわかった。そこで、平成29年度は、これまで用いていた速度分散法を大幅に改良し、複数輝線の輻射輸送を取り入れた解析法の開発に取り組んだ。おうし座分子雲は太陽系の近傍にあり、21cm線のいくつかの速度成分のうち、背景からのものと分子雲からのものの区別が比較的判別しやすい。また、視線速度毎の21cm線の積分強度図と可視光減光量を比較すると、空間的にどこに冷たいHIガスが分布しているのか、かなり明確に把握できることもわかった。新たに開発し方法の有用性を確かめるために、おうし座分子雲の一部であるTMC-1と呼ばれるフィラメントを解析した。本研究では、観測データの解析の他に、分子生成率を含めた分子雲形成時のMHDシミュレーションも、合わせて行なった。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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