研究課題
本研究は、未開拓波長領域であるテラヘルツ帯ヘテロダイン分光の超高感度素子の開発を行い、天文学や地球・惑星科学において、この波長域の観測を実現することを目指すものである。これまで我々は微細加工を必要としない準光学型のアンテナ・集光方法を用いて、次世代のテラヘルツ帯ヘテロダイン検出素子、超伝導ホットエレクトロンボロメータ(HEB)ミクサの開発を推進してきた。今回、ビーム特性の優れた、より実用的であるホーン/導波路型の集光方法を実装したHEBミクサ素子の開発に取り組んだ。細線には超伝導NbTiN薄膜を用い、素子の製膜などの製作プロセスは確立することができ、設計通りの良好な超伝導特性を得た。一方で、この素子を導波路に実装するためには、水晶基板に描画した素子を、幅36μm、厚み18μmまで微細加工によりチップ化する必要がある。このチップ化の際に、素子にクラックが入るなどが見られ、この微細加工の歩留りの向上が課題となっていた。本年、ダイシング時のブレードのポストプロセスや貼り付ける台座や接着剤などの改善を行い、ほぼ100%の微細加工の歩留りを実現することに成功した。また、地球の温暖化やオゾン層破壊・回復の実態、成層圏・中間圏の物質輸送の実態の詳細に迫ることを目的としたSuperconducting Submillimeter-Wave Limb-Emission Sounder(SMILES)2計画のワーキンググループの発足に伴い、従来のSISミクサ素子を用いた微量分子の観測に加えて、このテラヘルツ帯HEBミクサを搭載することを検討した。特にテラヘルツ帯の放射輸送計算を実施し、OHラジカルや酸素原子のSMILES-2による感度解析や観測手法などを検討した。地球や惑星の酸化反応ネットワークの中枢に迫ることが可能となるため、地球惑星大気科学への総合的なアプローチが可能となる。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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