研究課題/領域番号 |
26287035
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
丸藤 祐仁 東北大学, ニュートリノ科学研究センター, 助教 (60396421)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 素粒子実験 / ニュートリノ |
研究実績の概要 |
本研究では、加圧環境下における液体シンチレータ(LS)へのキセノン溶解度の増加、低バックグラウンドのフィルムまたは発光性のフィルムを活用した二重β崩壊探索実験の基礎研究を進めている。 前年までの研究により、1度ナイロンフィルムに付着した埃などの放射性不純物源を、洗浄などにより除去するのは困難であることが示されてきた。そのため、ナイロンフィルムでカバーを作り、埃の吸着を防ぐサンドイッチ構造にした上でバルーンを製作した時に放射性不純物が増加するかを確認した。解析の結果、ウランの増加についてはフィルム洗浄後の値に近く、3ppt程度の増加にとどまることが判明した。 発光性のフィルムについては、補修に用いる接着剤の選定を目指した。しかし、現実的に使用可能な一層型の接着剤5種類を試したが、いずれも接着することができなかった。 LSにキセノンを高濃度に溶解するにつれ発光量が落ちることが分かっている。この発光量低下の回復を目指し、キセノンの発光波長から400nm程度まで波長変換を行う1.1.4.4-Tetraphenyl-1.3-butadineを0.1g/L追加し発光量を測定した。しかし、添付していないものと比べ発光量は27%となり、使用に耐えないことが判明した。 発光性フィルムは400nmより短波長側で吸収がある。そのため、現在のLSを保持した場合、どの程度の光の吸収があるかを確認したところ、約50%を吸収により失うことが判明した。また、bis-MSBを0.1g/L添付し、発光波長を変換した場合についても確認したところ、4%の低下に留まることが判明した。この測定結果および発光フィルムと液体シンチレータの発光時定数の違いを用いる事で、キセノンを加圧環境下でLSに溶解させた二重ベータ崩壊探索実験における感度計算を行うシミュレーションの入力データが揃った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
液体シンチレータについての測定やフィルムに放射性不純物を付着させないための対策については概ね順調に進んでいるが、容器となる発光性バルーンの製作段階で発生する微小な穴を補修する接着剤の選定が今年度中に終了しておらず、目処が立っていない。そのため、再度製作を目材していた小さなバルーンの製作が進んでいないため、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までの測定結果を用いて、加圧環境および発光性バルーンを用いた二重ベータ崩壊実験の感度計算と検出器デザインを進める。また、小さなテストバルーンの製作については、溶着幅の短い溶着装置を入手したため、接着剤が使用できない場合でも溶着装置で小さな穴を塞ぎながら製作を進める計画を立てている。
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次年度使用額が生じた理由 |
発光性フィルムの接着剤の選定に目処が立たず、小さなバルーンの製作が進まなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
接着剤の選定を進めるとともに、溶着幅の短い溶着装置を入手し小さな穴を塞ぐ手法を確立する。その上で小さなバルーンの再製作を行う。
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