研究課題/領域番号 |
26287036
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
山口 貴之 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (10375595)
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研究分担者 |
山口 由高 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 仁科センター研究員 (40415328)
長江 大輔 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 協力研究員 (60455285)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 蓄積リング / 元素合成 / 多価イオン / ベータ崩壊 |
研究実績の概要 |
多価イオン状態の不安定核ベータ崩壊は宇宙で起きている元素合成過程の理解に非常に重要である。星のなかの高温高圧状態では、中性原子状態のベータ崩壊には見られない特異な現象が現れる。 本年度はドイツGSI研究所において、多価イオン状態の不安定核ベータ崩壊の寿命精密測定を行った。重イオンシンクロトロンSISにて約600MeV/uに加速された152Smをベリリウム標的に照射し、入射核破砕反応によって水素様電子状態の142Pmを生成した。142Pmは核破砕片分離装置FRSによって純化され、400MeV/uにて蓄積リングESRに入射される。入射された142Pmは蓄積リングの超高真空ビームパイプを約1分間周回し、その間、電子捕獲崩壊する。崩壊事象は共鳴ショットキーピックアップを用いて測定した。共鳴ショットキーピックアップは単一粒子にも感度がある。実験では1回の入射で約10個の142Pmを入射し、単一粒子の崩壊を精密測定した。ビームタイムは約2週間におよび大量のデータが得ることができた。平成27年度にデータ解析を完了し、質のよい崩壊曲線を得た。 また、理研の蓄積リングで同様の研究を進めるために、新しい蓄積リング用重イオン位置検出器を開発した。シンチレータをビームが通過するとき、発生する光子の空間分布を測定し位置を得る。原理検証に成功し、結果を投稿論文に発表した。また、蓄積リング内でデルタ線を利用したトリガー検出器を製作、ビーム試験を行った。さらには蓄積リングの個別入射のために不可欠な高速伝送線を設計、製作した。これによって、コミッショニングに成功し、Kr1次ビームを最高4秒蓄積することができた。コミッショニングでは2次ビームの入射、蓄積、取り出しにも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ドイツGSI研究所での実験が完了し良いデータが得られている。さらには理研の蓄積リングのための検出器群、装置開発にも成功し、ビームを使ったコミッショニングもうまくいった。
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今後の研究の推進方策 |
ドイツの研究は完了したので、平成28年度は理研の蓄積リングの整備に集中する。リング内で用いるデルタ線を利用したトリガー検出器を開発しつつ、ビームを用いたコミッショニング実験を続ける。特に開発要素であった共鳴ショットキーピックアップが非常にうまく動作したため、不安定核の寿命測定が可能になりつつある。ビームによるテスト実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
理研の蓄積リングのコミッショニングにおいて非常によい成果が得られた。将来理研にて寿命測定を行うべく必要な検出器の開発に重点をおいた。そのため新型のショットキーピックアップの開発は平成28年度に行う。
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次年度使用額の使用計画 |
理研の蓄積リングのコミッショニングを続け、現在のショットキーピックアップで寿命測定が可能か検証する。平行して新型ショットキーピックアップを開発する。
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