研究課題
多価イオン状態の不安定核ベータ崩壊は宇宙で起きている元素合成過程の理解に非常に重要である。星の中の高温高圧状態では、原子核は多価イオン状態にあるが、通常の実験室で測定される時は中性原子状態であるため、星の中とは環境が異なる。蓄積リングを用いると多価イオンに現れる特異な現象を観測することができる。本研究ではまずドイツGSI研究所において、多価イオン状態の不安定核ベータ崩壊の寿命精密測定を行った。重イオンシンクロトロンSISにて約600MeV/uに加速された152Smをベリリウム標的に照射し、入射核破砕反応によって水素様電子状態の142Pmを生成した。142Pmは核破砕片分離装置FRSによって純化され、400MeV/uにて蓄積リングESRに入射される。入射された142Pmは蓄積リングの超高真空ビームパイプを約1分間周回し、その間、電子捕獲崩壊する。崩壊事象は共鳴ショットキーピックアップを用いて測定した。実験では1パルスの入射で約10個の142Pmを入射し、単一粒子の崩壊を精密測定した。ビームタイムは約2週間におよび大量のデータが得ることができた。H27年度までにデータ解析を完了し、質のよい崩壊曲線を得た。並行して理研の蓄積リング、稀少RIリングで同様の研究を進めるために、重イオンビーム位置検出器を開発した。シンチレーション光子の空間分布を利用して位置情報を得る新しい検出器で、原理検証に成功し、結果を投稿論文に発表した。また、蓄積リング内でデルタ線を利用したトリガー検出器を設計製作し、オンラインでビームの周回観測に成功した。これら開発した検出器によって、これまで3度のコミッショニングに成功している。すなわち、Krビームの長時間蓄積、48Caビーム破砕片の個別入射の成功、238Uビームの核分裂破砕片の質量測定である。寿命測定の準備も整った。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 7件、 査読あり 7件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
Phys. Rev. C
巻: 95 ページ: 014610/1-6
10.1103/PhysRevC.95.014610
Phys. Lett. B
巻: 767 ページ: 20-24
10.1016/j.physletb.2017.01.039
巻: 754 ページ: 288-293
10.1016/j.physletb.2016.01.039
Eur. Phys. J. A
巻: 52 ページ: 138-148
10.1140/epja/i2016-16138-6
Nucl. Instrum. Methods Phys. Res. A
巻: 823 ページ: 41-46
10.1016/j.nima.2016.03.106
巻: 763 ページ: 16-19
10.1016/j.physletb.2016.10.015
Phys. Rev. Lett.
巻: 117 ページ: 182503/1-6
10.1103/PhysRevLett.117.182503