研究課題/領域番号 |
26287042
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
増田 公明 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 准教授 (40173744)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 宇宙線 / 宇宙高エネルギー現象 / 放射性炭素 / エアロゾル / 雲凝縮核生成 |
研究実績の概要 |
樹木年輪中の炭素14濃度を1年または半年の時間分解能で測定し,過去の宇宙線強度の急激な増加を探索した。今年度は,高時間分解能測定の空白年代である12世紀の試料29個を測定するとともに,西暦775年付近を半年の高時間分解能での試料調製と測定を試み,12試料(6年分)の結果を得た。また,炭素14を測定した年代に対応させて,アイスコア中のベリリウム10の測定も行った。 今後の多数の試料調製や炭素化を速やかに効率よく実施するため,試料洗浄の自動化と炭素化の自動化の開発を進めた。自動試料洗浄装置は一部の設計を見直した製品が納入された。自動炭素化については名古屋大学宇宙地球環境研究所技術部の協力を得て,設計を進め,4試料を同時に炭素化するプロトタイプの装置を試作し,効率よい炭素化のためのパラメータ設定を得た。 宇宙線が地球大気に与える影響を調べるために,宇宙線による雲凝縮核の生成メカニズムの解明を目指している。その方法として,一次宇宙線が大気中で生成する二次宇宙線成分のうち,地表近くでフラックスの大きい中性子に注目し,その代替粒子として中性子反応で生成される重イオンを用いて,粒子生成の効率を知らべた。窒素イオン入射と陽子入射実験を放射線医学総合研究所のHIMAC加速器で行い,重イオンの種類による差を調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は実験室の移転があり,実験そのものの進行がやや遅れたが,他研究機関の装置も利用して,予定に見合った炭素14の測定が進んでいる。試料調製自動化のうち,試料洗浄装置は予定より遅れて納品されたが,初期検査により基本的な性能を確認した。質量分析装置の試料炭素化の自動化を技術部の協力を得て実施し,4試料同時作製の試験運転の準備をしている。雲核生成実験は,今年度は2回のマシンタイムを獲得し,高信頼度の実験を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後速やかに移転作業を完了させ,炭素14の測定を精力的に行い,未測定の年代区間を極力減らし,新しい発見につなげる。 試料洗浄装置の性能確認と質量分析装置の試料炭素化の自動化をすすめ,本研究期間内に8試料同時作製を実現して,性能確認を行い,本研究に続く研究につなげる。 雲核生成については,加速器実験の結果を解析して,新しい視点で結果を考察し,イオン生成とエアロゾル粒子生成の関係に関するモデルを提案する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験室移転作業のため,加速器質量分析計による炭素14濃度測定のための試料作成と測定数が予定より少なかったことと,学会参加を取りやめたため旅費の使用が少なかったことが理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
炭素14濃度測定が前年少なかった分を増やすことにより,その経費に使用する。最終年度であるので,学会・研究会等への出席が増えると思われるので,その旅費に使用する。
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