研究課題/領域番号 |
26287042
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
増田 公明 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 准教授 (40173744)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 宇宙線 / 宇宙高エネルギー現象 / 放射性炭素 / エアロゾル / 雲凝縮核生成 / 太陽活動 |
研究実績の概要 |
過去3千年間の樹木年輪中の炭素14濃度を1-2年の時間分解能で測定して,1年以下の短時間で発生する宇宙線事象の探索を行っている。残念ながら測定に使用する予定であった名古屋大学宇宙地球環境研究所の加速器質量分析計が故障とメンテナンスのためほとんど稼働せず,予定していた測定の一部ができなかった。その分は一部を他の研究機関で測定したものもあるが,結局大半は研究期間を延長して来年度に測定することになった。 今年度の測定と解析による成果は二つである。一つは西暦1183年から1344年までの160年間を1年おきに測定したもので,太陽活動のウォルフ極小期を含むことから,太陽活動との関連を調べることができた。従来知られている特徴と必ずしも一致しないこともあり,さらなる調査が必要であることが分かった。二つ目はもっと過去に遡った測定である。3千年を超えるが,紀元前4600年頃のアメリカ産樹木年輪の炭素14濃度を測定した。我々が以前に発見したAD775年の場合より増加速度はややゆっくりであるが,10年で最大の増加量を示す事象が発見された。これは特大フレアのようには速くなく,大極小期のようには遅くもない時間変化であり,太陽活動の新しい解釈が必要かもしれない。 以上のような測定を続けるためには,年輪から測定のためのグラファイトへの変換(前処理)が必要であり,その効率化が求められている。研究所の技術部と協力して,4試料を同時に調製する装置を組み上げ,さらに8試料を経て,20試料同時調製を目指している。 宇宙線による雲核生成に関しては,放射線医学総合研究所のHIMACでの加速器実験を前年度に終了して,H28年度はデータ解析と実験室での補充実験を行い,結果をまとめているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
測定に使用予定の加速器質量分析計が,故障とメンテナンスのため実質的に稼働せず,測定データの解析もできず,計画が遅れるに至った。
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今後の研究の推進方策 |
故障していた名古屋大学宇宙地球環境研究所の加速器質量分析計(AMS)が稼働を始めたので,試験測定によって性能が故障以前と変わらないかどうかを確認した後,未知の試料を測定する。まずは平成28年度に測定した年代範囲で,試料調製不良などにより結果の出ていない年代を再測定すること,既存データと接続する年代のデータを取得して再現性を調べることなどにより,高精度を確認する。その上で,さらに古い方の年代に測定範囲を広げて,今後の研究につなげていく。 今後さらに測定数が増えていくと予想され,試料洗浄やグラファイト化などの前処理の自動化が望まれる。これまで開発してきた20試料同時処理の自動化装置を完成させ,今後の拡充を可能にしたい。 宇宙線による雲凝縮核生成については,実験結果をまとめて一定の結論を出したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
測定に使用予定の加速器質量分析計が,故障とメンテナンスのため,実質的に稼働せず,測定データの解析もできず,計画が遅れるに至った。またその結果学会発表が減少し,旅費使用額が少なかったことが理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は加速器質量分析計が十分に稼働すれば,放射性炭素濃度の測定料に使用する。その結果として学会発表できる成果が得られれば,学会等への参加旅費に使用する予定である。また必要に応じて,試料調製自動化装置の製作費に使用する。
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