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2015 年度 実績報告書

LHC14TeV運転における新粒子探索のためのミューオントリガー開発

研究課題

研究課題/領域番号 26287046
研究機関神戸大学

研究代表者

山崎 祐司  神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00311126)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2018-03-31
キーワードトリガー / 飛跡検出 / アルゴリズム開発 / ミューオン / 高精細飛跡検出器
研究実績の概要

本研究の目的は,高輝度化する LHC 加速器運転に対応して,アトラス実験においてミューオンを取得する高段トリガー(ソフトウェアトリガー)を改良することである。単位衝突数当たりのミューオントリガーの頻度を減らし,単位時間当たりのトリガー頻度を維持しつつ,トリガーで取得するミューオンのしきい値を低く保ち,新物理探索の感度を上げることである。この実現のため,A) 現在のデータ取得において,トリガーアルゴリズムの改良により頻度を落とすこと,B) 平成30年度に設置予定の新しいミューオン最内層検出器 NSW を用いたトリガーアルゴリズムを開発して,その後のデータ取得に備えること,が研究の大きな二つの目的である。
本年度の主な実績は,次の3つである。
1) ドリフトチューブ検出器のパターン認識改良をさらに進め,横運動量の再構成精度を大幅に高めた。この結果,トリガー効率を99%と維持しつつ,トリガー頻度を30%押さえることができた。また,ミューオン検出器のバレル部とエンドキャップ部の境界で,これまでトリガーに用いられていなかった検出器を使うことにより,飛跡の再構成精度を高め,この領域での運動量再構成精度を2倍に改善した。
2) タイルカロリメーター(ハドロンカロリメーター)の,衝突点から最も遠い部分にミューオンが一定のエネルギーを落とすことを利用して,ミューオンとハドロン粒子(パイ粒子,K粒子)を区別するアルゴリズムを開発した。カロリメーターのほぼ全域でハドロンを90%以上除き,ミューオンを90%以上選別することができた。
3) NSW に用いるマイクロメガス検出器の性能評価のための宇宙線スタンドを構築した。テストに用いるマイクロメガス検出器を,検出器自体の直線の残差から解像度が見られるように4層設置できるものとした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

上記の実績について,1) のドリフトチューブ検出器のパターン認識改良は,予定通りに進行している。これらの改良により,2018年までの LHC 加速器運転でトリガー頻度を十分抑えるためのアルゴリズムが用意できた。
2) は,予想を上回る高性能のアルゴリズムを開発できた。
3) は,テスト用のマイクロメガス検出器の製作,宇宙線のテストベンチは動作したが,信号読出し装置の構築が,やや遅れている。読出し装置はCERN研究所のSRSと呼ばれるものであるが,この購入を昨年延期した。この装置が近日アップグレードを予定しており,新しいシステムを購入・動作検証するほうが得策と判断したためである。これにより,従来より多チャンネルの読出しが可能となる。

今後の研究の推進方策

上記の1) については,目標をほぼ達成した。今後ルミノシティが上昇したときのバックグランドの上昇を理解するため,ミューオンのある場所近辺,あるいはミューオンから遠いところで,どのようにバックグランドが変化するか,調べていく。
上記の2) については,タイルカロリメータを用いたトリガーと2018年から運転開始予定の FTK (高速飛跡再構成トリガー装置)を用いると,これまでミューオン検出器がカバーしていない領域でもトリガーが可能になり,物理事象探索の効率を上げられる可能性がある。ただし,そのためにはまず,他のいずれかのトリガー信号でレベル1トリガーを通過させ,事象を高段トリガーまで導かなければならない。どのようなレベル1信号(他のミューオン,ジェット,電子等)と組み合わせてどのような物理過程の事象を取得するか検討する。また,それによってトリガー頻度が高くなり過ぎないか,その物理過程の取得効率を向上できるかを調べる。
上記の3) について,今期は重点を置いて進める。上記のように,新しい信号読出し装置を立ち上げる。これを用いて,抵抗膜を用いたマイクロメガス検出器の位置分解能を,構築した宇宙線ベンチを用いて正確に測定する。

次年度使用額が生じた理由

主な理由は,マイクロメガス検出器の信号読出し装置であるSRS装置の購入延期である。この装置が近日アップグレードを予定しており,新しいシステムを購入・動作検証するほうが得策と判断したためである。また,2016年に改良したアルゴリズムの性能評価モニターを行うため,昨年度予定していた長期のCERN研究所への出張を一つ今年度に延期した。

次年度使用額の使用計画

マイクロメガス検出器の信号読出し装置であるSRS装置を購入する。また,CERN研究所への長期滞在を予定している。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Performance of the ATLAS muon trigger in pp collisions at √s=8 TeV2015

    • 著者名/発表者名
      G. Aad et al., ATLAS collaboration
    • 雑誌名

      The European Physical Journal C

      巻: 75 ページ: 120, 151

    • DOI

      10.1140/epjc/s10052-015-3325-9

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] LHC-ATLAS実験のハイレベルトリガーにおけるにおける前方ミューオンの飛跡フィットの改良2016

    • 著者名/発表者名
      陳 叶
    • 学会等名
      日本物理学会 第71回年次大会
    • 発表場所
      東北学院大学(宮城県・仙台市)
    • 年月日
      2016-03-22 – 2016-03-22
  • [学会発表] LHC-ATLAS実験Run2データを用いたハイレベルミューオントリガーにおける横運動量再構成方法の改良2016

    • 著者名/発表者名
      田中 雅大
    • 学会等名
      日本物理学会 第71回年次大会
    • 発表場所
      東北学院大学(宮城県・仙台市)
    • 年月日
      2016-03-19 – 2016-03-19
  • [学会発表] LHC-ATLAS実験におけるハドロンカロリメーターのミューオントリガーへの応用2015

    • 著者名/発表者名
      細川 健人
    • 学会等名
      日本物理学会 2015年秋季大会
    • 発表場所
      大阪市立大学(大阪府・大阪市)
    • 年月日
      2015-09-27 – 2015-09-27
  • [学会発表] LHC-ATLAS実験Run2データを用いたHLTミューオントリガーの横運動量しきい値の最適化2015

    • 著者名/発表者名
      西原 佑
    • 学会等名
      日本物理学会 2015年秋季大会
    • 発表場所
      大阪市立大学(大阪府・大阪市)
    • 年月日
      2015-09-27 – 2015-09-27
  • [学会発表] LHC-ATLAS実験レベル2ミューオントリガーシステムにおける飛跡再構成アルゴリズムの改良とRun2データを用いた性能評価2015

    • 著者名/発表者名
      田中 雅大
    • 学会等名
      日本物理学会 2015年秋季大会
    • 発表場所
      大阪市立大学(大阪府・大阪市)
    • 年月日
      2015-09-27 – 2015-09-27

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公開日: 2017-01-06  

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