研究課題
今年度はNb製超伝導検出器(Kinetic Inductance Detector, KID)の開発を引き続き行った。検出器の感度を測定するために、力学的インダクタンスと全インダクタンスの比を、共振周波数の温度依存性から測定し、50nmの膜厚の検出器で最大0.12を得た。300から50nmの厚みの検出器を作製・評価したところ、薄いほど感度が高いことを示すことができた。一方、50nmより薄いと超伝導に転移しないことがわかった。これは、ニオブのコヒーレント長が約40nmであるからだと考えられる。厚さ50nmの検出器に2種類の異なる波長のレーザー(660nm, 402nm)のパルス光(幅10n秒)を照射し、その応答を見ることにより、リニアリティを測定した。検出器に照射される光子数は、光の照射プロファイルと光電子増倍管を用いることによって較正した。その結果、誤差は大きいが、単位エネルギーに対する応答感度は概ね一致した。最小感度のエネルギーは1keV程度であることがわり、これは目標感度(液体ヘリウムシンチレーションの16eV光子)より約2桁足りない。これは測定系の雑音により、小信号が埋もれてしまったと考えられる。今後は、マイクロ波読み出し配線で検出器の直前にアッテネータ、出力直後にHEMTアンプを用いることによりS/N比を改善できると考えられる。KIDの周波数領域多重読み出しに関する査読付き論文(Journal of Low Temperature Physics)が受理され出版された。また、検出器アレイの応答を一様にするために、エッチストッパーを用いた新しい作製手法を見出した。すなわち、AlNの薄膜を予めシリコン基板上に敷くことにより、オーバーエッチングを防ぎ、一様な検出器アレイの作製に成功した。この成果は、査読付き研究論文(低温工学)に出版された。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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低温工学
巻: 54 ページ: 33-36
doi.org/10.2221/jcsj.54.33
Journal Low Temperature Physics
巻: 193 ページ: 518-524
doi.org/10.1007/s10909-018-1911-6