研究課題/領域番号 |
26287048
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
角野 秀一 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (70376698)
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研究分担者 |
住吉 孝行 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (30154628)
石原 信弘 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 名誉教授 (50044780)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 二重ベータ崩壊 / 飛跡検出器 |
研究実績の概要 |
ニュートリノレス二重ベータ崩壊の観測を目指して、飛跡検出器を用いた二重ベータ崩壊の観測実験を行なっている。飛跡検出器でベータ線の同定を行うことで、ガンマ線のバックグラウンドを抑制し、また、2本のベータ線の運動学的情報を得ることができる点が本手法の特徴である。これまでに、先行研究(DCBA-T2実験)によりモリブデン100の二重ベータ崩壊の観測が行われている。 本研究では、DCBA-T2実験で用いていた飛跡検出器を微細化した新たな飛跡検出器(DCBA-T3飛跡検出器)を開発し、運動量(エネルギー)分解能の向上を目指している。DCBA-T3飛跡検出器では、DCBA-T2実験で使用していた飛跡検出器のワイヤーピッチ(6mm)を半分の3mmに微細化し、また超伝導電磁石を用いて磁束密度をDCBA-T2実験の0.8kG から3kGに増強し、ベータ線の飛跡を短くしてガス中でのエネルギー損失を抑える。二重ベータ崩壊線源としてはネオジム150を用い、ネオジム150のQ値である約3MeVにおいて、約3%のエネルギー分解能を目指している。本年度の研究では、新しい飛跡検出器を動作させるための、ガスコンテナをはじめとするガス供給システムを作成し、また昨年度から継続している信号読み出し機器の開発を行った。新しい飛跡検出器と新しい信号読み出し機器を用いて、宇宙線の観測を行った。その結果、新しい飛跡検出器を用いてはじめて宇宙線の飛跡の観測に成功した。また、宇宙線の観測を通して、現在の信号読み出しシステムにおける問題点を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年度ガスコンテナの不具合に伴いガスコンテナの新規制作を行ったことにより、当初計画と比較して研究の進捗が後ろにずれ込んでいる。本年度はガスコンテナの問題を解決し、新型飛跡検出器を用いた信号の観測に漕ぎつけたが、宇宙線信号の観測により、信号読み出し装置の問題点(信号増幅率の不足)が明らかになった。DCBA-T3実験の開始のためには、信号読み出し機器のさらなる改良を必要としている。
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今後の研究の推進方策 |
現在の課題は読み出し機器の改善である。飛跡検出器のワイヤーピッチの微細化によりワイヤー当たりの有感領域が減少するため、読み出し機器にはDCBA-T2より高い信号増幅率を必要とする。宇宙線試験の結果、現在使用しているプリアンプの増幅率では充分な信号増幅率が得られないことが分かった。プリアンプの増幅率を変えるためには、集積回路の設計からやり直す必要があるため、プリアンプの前段にもう一段プリアンプを増幅率の改善を目指す。宇宙線試験を用いて信号の増幅率の改善を確認した後、DCBA-T3実験装置の組立に入り、早期の実験開始を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
宇宙線を用いた試験を行った結果、飛跡検出器の読み出し装置の信号増幅率が不足しておりことがわかり、信号読み出し装置の改良が必要であり、DCBA-T3実験を行うために必要な数の信号読み出し装置をまだ製作していないため。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度までに使用しなかった予算は、現在遅れている信号読み出し装置の製作に使用する。また、その製作の前段階として信号読み出し装置の改良の試作にも使用する。
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