本研究では、飛跡検出器の時間および空間的な較正(時空間の較正)を精密に行う方法を開発する。J-PARCで超冷ミューオンビームを用いてミューオン異常磁気能率(g-2)および電気双極子能率(EDM)を精密に測定する実験を計画している。この実験では、崩壊陽電子の飛跡を測定することにより、磁場中で歳差運動するスピンの回転周波数と回転軸の方向を決定する。測定感度を決めるのは、測定機器の安定性と時間・飛跡角度の絶対確度である。要求される仕様を達成するため、高安定度周波数標準および変位測定システムを用いた較正システムを構築し、その評価を行う。飛跡検出器の羽根型モジュールの構造モックアップを製作し、その性能を評価する。最後に、監視・制御サーバーを用いた時刻・空間の較正データをロギングするシステムを開発し、データベース化を行う。 これまでに得られた検出器構造の具体的な設計と模型を用いた検証結果に基づき、レーザー干渉計を用いた変位測定の原理実証試験システムを構築し、求められている安定度を満たすかどうか検証した。光コムレーザーをRb周波数標準に同期して発振させ、ファイバーエタロンを用いて高調波を取り出すことにより、60MHzで周波数安定性が極めて優れたレーザーパルスを実現した。これを用いて1次元の光干渉計を構築し、既知の光路変化に対して1μm以下の変位測定精度が得られるかの原理実証を行い、目標とする安定度が得られることがわかった。これらの結果をアラインメントに関する国際会議や国内学会等で発表した。
|