研究課題/領域番号 |
26287056
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
長瀧 重博 国立研究開発法人理化学研究所, 長瀧天体ビッグバン研究室, 准主任研究員 (60359643)
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研究分担者 |
水田 晃 国立研究開発法人理化学研究所, 戎崎計算宇宙物理研究室, 研究員 (90402817)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ガンマ線バースト / ブラックホール / 輻射輸送 / 超新星 / 相対論的ジェット / ニュートリノ / 状態方程式 / アインシュタイン方程式 |
研究実績の概要 |
「相対論的ジェットの伝搬」 本研究ではガンマ線バースト放射を説明するモデルとして「フォトスフェリックモデル」を念頭に置いています。本年度、我々が開発した3次元相対論的磁気流体計算コードを用いて大質量星中を突き抜ける相対論的ジェット伝搬シミュレーションを行いました。この結果を用いて以下に述べるガンマ線伝搬過程パートの計算を行いました。 「ガンマ線伝搬過程」 上記流体計算で評価される流体各素片から放射される熱的放射が伝搬中にどの程度散乱を経験するのか、その結果最終的にどのようなスペクトルに変形されて地球上に到達するのかということを計算するのがこのパートの役割です。特にこのパートで重要となる狙いは、高エネルギー電子による逆コンプトン散乱により、ガンマ線の高エネルギー側の冪指数が熱放射スペクトルから変更され、観測と整合する非熱スペクトルになることです。本年度、我々はこのアイデアを推進するべく、バルクコンプトンだけでなく電子温度に起因する(そしてそれはジェット中で起こる衝撃波下流では非常に高温になる)逆コンプトン散乱効果も取り入れたモンテカルロ計算コードの開発をしました。更に驚いたことに低エネルギー側のスペクトルも、ジェットの様々な場所からの熱的放射の重ね合わせによって説明出来ることを発見し、査読論文として公表しました。 「ガンマ線バースト中心エンジン」 中心エンジン計算は、強重力場、強磁場、高密度状態方程式、ニュートリノ物理など複雑な物理が絡みあう現象ですが、それら全てを網羅した数値コードは開発されていません。本年度はこれまで開発してきた3次元一般相対論的磁気流体コードを更に高精度に拡張しました。特にアインシュタイン方程式ソルバーの装着に成功しました。本年度はアインシュタイン方程式ソルバーを用いた一般相対論的重力に基づく大質量星の重力崩壊のテスト計算を行いました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「相対論的ジェットの伝搬」 現在までに我々は3次元相対論的磁気流体計算コードを開発し、現実の大質量星中の相対論的ジェット伝搬計算を実行しました。更に3次元相対論的磁気流体計算コードも開発は完了しています。更に平成28年度の研究に向けて、ジェットパラメータを系統的に変えて行く、多数の2次元相対論的ジェット伝搬計算を行いました。 「ガンマ線伝搬過程」 バルクコンプトン、及び電子温度に起因する逆コンプトン散乱効果を取り入れた輻射輸送コードを現在まに開発し、実際それを用いて3次元相対論的ジェットに於けるガンマ線バーストフォトスフェリックモデルを計算しました。これは世界初のことです。その結果を査読論文として公表しました。 「ガンマ線バースト中心エンジン」 中心エンジン計算のためにアインシュタイン方程式ソルバーの装着した一般相対論的磁気流体コードの整備に成功しました。現在はニュートリノ冷却の効果を取り入れる手法について検討しています。
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今後の研究の推進方策 |
本研究成果として「相対論的ジェットの伝搬」と「ガンマ線伝搬過程」の連動について世界最先端のレベルを達成しました。しかし世界的競争は激しく、追随してくるグループが世界にありますので、このタイミングで世界に先駆けて多くの成果を挙げたいと計画しています。一つはジェットパラメータを様々変えて、多様な状況下に於けるフォトスフェリックモデル計算を行い、実際の観測と比較することです。更に磁場の効果を取り入れた相対論的磁気流体に基づくフォトスフェリックモデルにも取り組みたいと考えています。「ガンマ線バースト中心エンジン」のパートはアインシュタイン方程式ソルバー、ニュートリノ輸送など複雑な物理が絡みます。ですのでこのコードの真の完成は10年スケールの時間が必要であると当初から考えていましたが、アインシュタイン方程式ソルバーの装着には完成し、ある近似を施したレベルのニュートリノ輸送計算には見通しが出てきました。ですので本年度はある程度現実的な大質量星に於ける重力崩壊とガンマ線バーストジェット計算に取り組みたいと考えています。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題を推進するにあたり一名のテクニカルスタッフIIを雇用した。その結果我々の主催した国際研究集会「GRB Workshop2015」(2015年8月31日-9月2日)は大変な成功を修め、本研究課題の推進に役立った。もともとはテクニカルスタッフIIを2016年3月末まで雇用予定であったが本人の都合により2016年2月末で退職されたため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度新規に研究員を雇用する費用に充て、本研究課題の更なる推進に役立てる。
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