研究課題/領域番号 |
26287057
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
大西 宏明 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 専任研究員 (60360517)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 反陽子ー陽子消滅反応 / ダブルφ中間子生成 |
研究実績の概要 |
反陽子ー陽子消滅反応においてダブルφ中間子生成事象の閾値近傍でその生成断面積の異常な増大現象が報告されている。しかしながら、その原因を含めその全容が明らかにされているわけではない。その有力な解釈として、我々の知らない未知のエキゾチックハドロンの生成に起因しているとする理論的な予想が存在する。本研究では、ダブルφ中間子生成事象の閾値近傍での生成断面積の増大の原因が未知のエキゾチックハドロンであるのかどうかについて結論付けることを最終的な目標としている。そのために、世界で唯一低エネルギーでの反陽子ビームが利用可能であるJ-PARC において本研究課題を推進することを目的としてきた。 実験装置としてはJ-PARC K1.8BRに既設のE15 スペクトロメータを使い行うことを計画しているが、実験実施には標的周りの飛跡検出器のアップグレードが必要であった。そのため、新規に標的周りに設置するZ バーテックスチェンバーを設計、新規に設置することを目的とした検出器開発を行った。この検出器の仕様決定のため、前年度作成した試作機の詳細な性能評価を行ってきた。この性能評価の結果をもとに実機に対する仕様の決定を行った。また並行して新規に導入した検出器のための読み出し回路の選定、調達を行い、Zバーテックスチェンバーが製作されれば速やかにその性能評価を行うための準備を完了した。 また、当該研究成果の持つ物理的な意義やその波及効果などに関する議論を国内外のワークショップに参加し、ハドロン物理に関する理論、実験研究者と積極的に行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、大強度陽子加速器施設J-PARC に既設汎用スペクトロメータであるのE15 スペクトロメータをベースとして研究を実施するものである。しかしながら、既存の設備の弱点、また本研究計画遂行に必要不可欠な反応点ビーム軸方向の位置分解能を向上させることを目的として標的を覆うように飛跡検出器(Zバーテックスチェンバー)を新規に設計、設置する予定であった。試作機を製作し、性能評価を行ってきが、想定以上にノイズが大きく読み出し回路の接地方法など大幅に当初の計画から変更を余儀なくされた。しかしながら、種々のテストを実施したのち、最終的な仕様決定までたどり着くことができた。さらに、当該年度Zバーテックスチェンバー用の信号読み出し回路に関する仕様の決定、調達を行った。これと並行してテストベンチ用の読み出し回路システムの構築を行った。以上により、実機の製作が完成すれば直ちに放射線源、宇宙線や、国内加速器施設での粒子線を使った試験を実施する体制を整えることができた。 また、米国におけるハドロン物理に関する中心的な研究機関の一つである米国ジェファーソン国立研究所において行われた国際ワークショップに参加し、外国人研究者とハドロン物理にたいする本研究課題の与える寄与に関する議論のみならず、本研究を今後どのような方面へと発展させていくことが必要であるかについての議論を行った。 上記の通り、実験実施に向けた準備は着実に進んでいることから自己評価を”おおむね順調に進展している”とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後の予定としては、完成したZバーテックスチェンバーの仕様を元に実機を製作することが最優先課題となる。また、速やかに構築した読み出し回路系のシステム試験などを行う必要がある。上記二点に関しては、問題なく実施可能な事案である。また、実機の性能評価を目的とした最終試験に関しても、国内加速器施設などで行っていく必要がある。東北大学電子光理学研究センター電子線や、実験場である J-PARC ハドロンホールなど利用可能施設で適宜テスト実験を行っていく計画である。 また、最終的な物理成果を見据え、国内外の理論/実験研究者との密な連携、議論を重ねていく必要がある。積極的に国際会議などに参加していく計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究計画において新規に製作するZ バーテックスチェンバー仕様決定の延期を受け、調達予定であったZ バーテックスチェンバー実機の製作、その他周辺物品調達のための予算を繰り越しとしました。
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次年度使用額の使用計画 |
Zバーテックスチェンバー実機の製作のために使う予定である。
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