研究課題
今年度はH27年度に得られた実験結果の論文化に向けて解析を進めるとともに、物理的な考察を深めた。①ErFeO3における長寿命スピン共鳴現象Q値が1000を超える長寿命の歳差運動が見いだされ、その振幅(包絡線)が時間的に大きな変動を繰り返すことを見出していたが、昨年度行なった実験により、その振舞いが試料の形状に強く依存することが明らかになった。その原因を究明するために、ロッド状の試料における実験結果の詳しい解析を行なった。その結果、歳差運動は周波数の接近する多数のモードに分裂しており、モード間隔は試料の厚さによって決まっていること、ロッドの幅を変化させた場合は、それらのモードのうち特定のものが選択的に励起されるために、結果としてモード間のビートの条件が変化し、複雑な包絡線の振舞いを示すことがわかった。当初我々が想定していた副格子内の4つの鉄スピンの結合によるモード分裂という解釈は否定され、スピン波が有限サイズの試料内に作る定在波が関係している可能性が示唆されたが、確実な解釈は今後の課題として残った。②強力THz磁場によるスピン再配列転移の制御昨年度に、スピン再配列転移のコヒーレント制御に成功したので、そのメカニズムを解明するために、LLG(Landau-Lifshiz-Gilbert)方程式に基づくモデルを構築し、実験結果の再現を試みた。その結果、ファラデー信号の時間波形や転移効率の温度依存性などの基本的な性質をほぼ再現することができた。さらに、再配列転移におけるスピンの制御には、2つのメカニズムがあることが判明した。そのひとつは、THz磁場によって誘起された歳差運動にともなうスピン揺らぎであり、もう一つは、THz磁場が直接スピンを傾ける作用である。以上の成果は、超高速スピン制御に新たな方式を提示したものと言える。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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