研究課題/領域番号 |
26287064
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
寺崎 一郎 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30227508)
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研究分担者 |
太田 裕道 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (80372530)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 光物性 / セラミックス / 先端機能デバイス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、(1)様々な絶縁体単結晶や薄膜に光を照射することによってキャリアを励起し、(2)その電気伝導率、熱起電力、ホール係数、熱伝導率を光の波長・強度、温度の関数として計測し、(3)光によってドープされたキャリアのキャリア濃度、移動度、ローレンツ数を定量的に明らかにすることである。また、緩和過程として光伝導が生じている状態での発光スペクトルも計測する。 第2年度である平成27年度はSrTiO3単結晶および高品質薄膜の光ゼーベック効果、光伝導率、光ホール効果の精密測定を行った。主な結果を以下に示す。 (1) ZnOの光ゼーベック効果を解析し、単結晶、多結晶、薄膜の応答を総合的に比較し、論文にまとめた。その結果、すべての形態の試料でキャリア濃度は単位胞あたり0.1%程度で飽和することがわかった。これはZnOの中光で生成された電子ホール対のうち、ホールをトラップする欠陥準位の密度が単結晶、多結晶、薄膜でほぼ同じであることを示している。 (2) SrTiO3の光輸送現象の低温での測定結果を、系の誘電性と熱電特性を同時に満たすような現象論を構築し、定量的に説明することに成功し誘電性と比較した。また、わずかにAlをドープした単結晶試料において光ゼーベック効果を計測した。そして、わずかな不純物によって光ゼーベック係数や光伝導率が変化するこを発見した。 (3) SrTiO3高品質薄膜を用いて、光伝導率、光ゼーベック係数、光ホール係数の同時計測に成功した。その実験結果を解析することで、光キャリア濃度、移動度、散乱機構についての知見を得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光交流法による熱伝導測定システムは構築できたが、光による本質的変化を得るにはいたっていない。その理由として、光強度を上げてもキャリア濃度は飽和し、その値十分に増やすことができないため、光ドープされたキャリアの寄与を正しく分離できないからある。その代わりに、光伝導、光ホール、光セーベック効果の同時計測には成功しており、これによってキャリアの特性を評価することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
研究は概ね順調に進んでおり、平成28年度は、CRISMAT研究所との連携を強化し、CRISMATで研究されている遷移金属カルコゲナイドに対象を拡大する。また昨年度までに明らかになった、光ドープされたホールを捕獲する欠陥準位の制御を試みる。また光ドープされた電子の拡散距離をパターニングしたZnO単結晶を用いて評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
測定結果の解析に集中したため、実験に使用する寒剤代金や試料作成にかかわる材料費が予想より少なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度には今年度の成果を踏まえ、より多くの試料作成と物質探索に中心を移し、今年度の予定金額を使用する。
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