研究課題/領域番号 |
26287066
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研究機関 | 埼玉工業大学 |
研究代表者 |
内田 正哉 埼玉工業大学, 付置研究所, 教授 (80462662)
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研究分担者 |
齋藤 晃 名古屋大学, 学内共同利用施設等, 教授 (50292280)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 粒子線 / 量子ビーム / 電子ビーム / 波動関数 / 位相 / スピン / ベッセルビーム / 特異点 |
研究実績の概要 |
本研究では、軌道角運動量をもつ電子ビームの研究を発展させ、新しい伝播モードをもつ電子ビームの生成を、電子ビームの波動関数(位相およびスピン)を操作することにより行なうことを目的に研究を遂行している。平成26年度の主な成果は、以下の通りである。 1.電子ベッセルビームの生成を試みるにあたり、各種光学素子を用いた場合の波動伝播シミュレーションを行い、円環スリットを用いて生成される電子ベッセルビームが非回折性、自己修復性を有することを明らかにした。また、シミュレーション結果に基づき、円環スリットの設計を行い、実際に集束イオンビーム(FIB)を用いて円環スリットを作製した。 2.電子ビームの波動関数の位相を制御するのに、多極子レンズとの組み合わせで特異点をもつ電磁場分布が実現可能であるのかシミュレーションを含む理論面から詳細な検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度、主に2つの課題に取り組んだ。そのうち、1)の電子ベッセルビームのシミュレーション、光学素子の設計、作製については目標通り達成することができた。これは今後の研究遂行に大変大きな一歩である。一方で、次の点は遅れが生じている。2)特異点をもつ電磁場分布で電子ビームの波動関数を制御するのに、電子光学条件および現有している電子顕微鏡のスペックから困難であることが分かり、計画の練り直しを行っている。以上のとおり、目標を達成できた課題がある一方で、遅れが認められる課題もある。チャレンジングな課題は当初の全体計画の想定内であり、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、実験的に電子ベッセルビームを生成させることを目指し、作製した円環スリットを電子顕微鏡に搭載する。この電子ビームは非回折性、自己修復性をもつことが予想されることから、これらを重点的に調べる。また、軌道角運動量、位相特異点の観点からも調べる。電子顕微鏡を含む実験装置、実験パラメータはこれまで実施してきた電子ボルテックスビームの研究でほぼ整っており、目標は達成できるものと考えている。また、モノポール型磁場により電子ビームの位相を制御することも試みるため、ナノサイズの磁性体作製にも着手する予定である。これと並行し、今年度、明らかになった問題点を解決すべく特異点をもつ新たな電磁場分布生成方法の開発も目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
装置の開発遅延:事前調査として理論計算およびシミュレーションをしていたところ、当初の予測に反し、設備備品として予算を計上していた「特殊電磁場レンズシステム」の磁場がスピン-軌道角運動量の転換、検出を行うには不十分であると判明した。このため、電磁場レンズ性能の再検討を行う必要が生じた。これに伴い、備品「スピン・軌道角運動量検出装置システム」に関連する蒸着装置等、消耗品「電子顕微鏡用電子銃エミッタ」にも遅滞が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
シミュレーションを含む詳細な検討の結果、「特殊電磁場レンズシステム」を独自に設計、微細加工技術により作製することとした。繰り越した予算で作製に必要なスパッタ蒸着装置を購入する予定である。この装置は当初の計画にあった備品「スピン・軌道角運動量検出装置システム」に関連する蒸着装置としても使える。これにより電場型はTEM試料ホルダー組み込み型レンズ、磁場型はサブミクロンサイズの電磁コイルの作製が可能となる。
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