研究課題
平成28年度は前年度に引き続き,高強度テラヘルツ光源を用いて,量子常誘電体であるチタン酸ストロンチウム結晶に対する透過配置でのソフトフォノンモード分光を試みた.ソフトフォノンモードは量子常誘電体における熱の波動(第二音波)の存在に本質的に重要な役目を果たしている.すなわち,低温でソフトモードの状態密度が高い場合にのみ熱の波動が存在できるので,高強度テラヘルツ波をソフトモードの共鳴周波数に同調することによってソフトモードの状態密度を高めることを目的としている.実験に用いた単結晶試料は65マイクロメートルまで特別に研磨されたものを使用した(研磨には高度な技術を要するが,理研スタッフの協力によって充分に薄い薄片試料が作成された).室温から極低温まで温度変化させるとき,チタン酸ストロンチウムのソフトフォノンモードの周波数は約3THzから1.5THz程度まで低周波数化(ソフト化)する.チタン酸ストロンチウム試料の温度を室温(292K)とし,高強度テラヘルツ波の波長を掃引することで,吸収スペクトルおよび透過率スペクトルの直接測定を行った.温度を下げていくとソフトモードのソフト化に伴い吸収ピークが低周波数側にシフトし,テラヘルツ波によってソフトモードが励振されていることが確認できた.パルス誘起過渡的熱グレーティング分光法においては,参照用の試料物質(二酸化チタン)において,低温の熱拡散係数の実測値が文献値から大きく外れることを見いだした.一方,チタン酸ストロンチウムでは低温でも熱拡散係数の実測値は文献値に一致していた.この違いは,フォノン気体の非平衡性に起因するものと考えられ,チタン酸ストロンチウムではソフトフォノンの存在によって,低温でもフォノン気体が局所熱平衡を満たすことを実験的に証明できたものと考えている.
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Nature Communications
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