研究課題/領域番号 |
26287068
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研究機関 | 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所 |
研究代表者 |
鈴木 恭一 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 量子電子物性研究部, 主任研究員 (20393770)
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研究分担者 |
入江 宏 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 量子電子物性研究部, 研究主任 (20646856)
小野満 恒二 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 機能物質科学研究部, 主任研究員 (30350466)
村木 康二 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 量子電子物性研究部, 上席特別研究員 (90393769)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | トポロジカル絶縁体 / 半導体へテロ構造 / 量子スピンホール効果 / 量子化伝導 |
研究実績の概要 |
・トポロジカル絶縁体(TI)内部は、伝導帯と価電子帯がエネルギー的に重複・反交差したエネルギーバンド構造をもつ。これまで知られていたTIが材料それ自体に元々このTIバンド構造をもつのに対して、InAs/GaSb電子-正孔複合量子井戸では、隣り合ったInAsの伝導帯とGaSbの価電子帯が混成することでTIバンド構造を実現する。これにより、従来のTIでは不可能なゲート電圧による伝導帯-価電子帯混成の制御が可能となる。前年度において我々は、ゲート電圧による半金属-TIのスイッチングを実現しており、今年度は、これらの実験結果の詳細な解析・考察を行い論文にまとめた。 ・2次元TIの特徴であるエッジチャネル伝導について詳細に調べるため、特定のエッジチャネル伝導のみが観測できるエッチングパターンを考案した。このエッチングパターンをもつ試料について伝導測定を行い、特定の一本のエッジチャネルについて量子化値に近い伝導を観測した。これに並行して、電極間隔を変えた試料を用いエッジチャネルの散乱機構解明に取り組んだ。 ・エッチング条件、ゲート絶縁膜の成膜条件、試料の切り出し、ワイヤボンディングについて最適化を行った。その結果、試料歩留まりが向上し、ゲート制御範囲が拡大した。 ・スピン注入実験を行うにあたり、電子ビームリソグラフィーによる微細パターン形成と、磁性体(ニッケル)蒸着の条件出しを行った。 ・安定的なTI状態の実現とより量子化に近いエッジチャネル伝導を目指し、走査トンネル顕微鏡観察用試料を含めて、各種パラメータを変化させた多数の試料の結晶成長を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
・結晶成長装置のメンテナンスに時間がかかり、試料作製が滞った。 ・不純物散乱を避ける目的でドーピングを行わない試料を試しているが、エッジチャネル伝導以外のパラレル伝導が生じ、エッジチャネル伝導の正確な観測を妨げている。この原因が解明できていない。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に基づき研究を進めていく。(1)スピン注入に関しては、まず磁気力顕微鏡による磁区観察を通して磁性体膜パターンの最適化を行い、TIへのスピン注入を実現する。(2)超伝導との接合に関しては、アンドレーエフ反射を確認し、磁場に対する振動からエッジチャネルの空間分布を同定し、出現する物性の解明を行う。(3)平坦な断面を得るためのへき開方法を検討し、断面走査トンネル顕微鏡観察によるエッジチャネルの実空間観察を目指す。(4)障壁層、電子層、正孔層それぞれの組成・厚さを最適化し、より安定した量子化に近いエッジチャネル伝導の実現を目指す。
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