研究課題
(1) 電子型誘電体の候補物質である有機物質kappa-H3(cat-EDT-TTF)の電子状態について調べた。この物質では分子ダイマー内の電子の電荷自由度に加えて、水素結合におけるプロトンの自由度が存在する。これまでに導出した理論模型に基づいて、平均場近似と厳密対角化法を併用し電子状態の相図を完成させた。プロトンの揺らぎにより磁気秩序が抑制されること、ならびに電子間相互作用により強誘電的電荷秩序が生じることを見出した。(2) ダイマー分子構造を有するkappa型BEDT-TTF有機化合物を念頭において、電子相図における電子相関の役割を明らかにした。この系を記述する拡張ハバード模型においては、反強磁性秩序相とダイマー内の電荷分布の偏りによる電気分極相、ならびに金属相の3つの相が競合する。変分モンテカルロ法を用いた解析により電子相関効果を正しく取り扱った結果、相図の広い領域でスピン相関より電荷分極相関が大きいこと、金属絶縁体転移近傍では電荷相関は発達するのに対し、スピン相関はほとんど変化しないことを見出した。またこの系で見いだされている超伝導に対する電荷自由度の役割を明らかにした。(3) 巨大負の熱膨張やサイト間電荷移動を生じることが知られているBiNiO3について第一原理電子状態計算を行い、構造不安定性とBi-6sローンペアとの相関を明らかにした。また、強誘電体BiCoO3やマルチフェロイック物質BiFeO3など他のビスマス遷移金属酸化物についてワニエ関数を用いた解析を行うことにより、強誘電歪みや磁性の微視的起源について包括的な理論研究を行った。格子自由度と結合した拡張ハバード模型の解析によりBiCoO3におけるスピン転移と強誘電手に取の相関について明らかにした。(4) 有機電子誘電体に関するモデル計算を行い、中性イオン性転移系の相競合とドメイン励起について調べた。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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