研究実績の概要 |
我々は、以前の研究において、Pb単原子層膜の超伝導転移温度の平行磁場依存性が、強いRashba効果のもとに形成される秩序変数の位相が空間変化する2次元超伝導相に対する計算によって定量的に再現できることを示した(Sekihara et al. Phys. Rev. Lett. 111, 057005 (2013))。本年度は、Inの単原子層膜、Bi、Alの超薄膜に研究を拡張することにより、平行磁場下での超伝導状態の「丈夫さ」が、スピン軌道相互作用の強さに関連していることを明らかにし、モデルの正当性を確認した。また、Rashbaスピン分裂の大きさが小さい場合に対してモデルの拡張を行い、Inの単原子層膜に対する実験結果を再現することに成功した。 本研究では、さまざまな元素および合金を用いて単原子層膜の作製を試みることを計画しているが、絶縁化する原子密度や熱処理条件などは、本測定を行う前に押さえておいたほうが効率的である。そのために、室温から4.2 Kまでを短時間で冷却し、同程度の時間で昇温できる装置を製作した。 磁性に関する研究として、Feの超薄膜に対して極低温・強磁場下での電気伝導の測定を行った。大きな異常ホール効果が観測された。ホール角は金属鉄に対して行われた先行研究よりも大きい値が得られた。また、縦抵抗および異常ホール抵抗のいずれにおいても温度の対数に比例した変化が観測された。ホール伝導率の温度係数は先行研究よりも大きなものが得られた。
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