研究課題/領域番号 |
26287076
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
佐々木 重雄 岐阜大学, 工学部, 教授 (30196159)
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研究分担者 |
久米 徹二 岐阜大学, 工学部, 准教授 (30293541)
松岡 岳洋 岐阜大学, 工学部, 助教 (10403122)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 分子性固体 / 光物性 / メタンハイドレート / 弾性定数 / 高圧力 |
研究実績の概要 |
石油代替エネルギー資源として注目されているメタンハイドレートの実用化研究が進む中,安全なメタンガス採出に必要なメタンハイドレートの静的および動的な構造安定性は未だ評価されているとはいい難い。そこで本研究課題では,せん断応力を印加することができる高圧アンビルセルを開発し,せん断応力下にあるメタンハイドレート,メタン-プロパン混合ガスハイドレートの静的および動的な構造安定性,相変化,ゲストメタン分子のホスト水ケージ占有状態,弾性的性質を顕微鏡観察,高圧ラマン・ブリュアン散乱測定より,圧力及びせん断応力の関数として調べ,せん断応力がメタンハイドレートに与える諸々の影響について明らかにする。 平成26年度では,主としてせん断応力を印加することができる高圧アンビルセルの設計・試作,高圧ブリュアン散乱分光装置検出系の再構築,高感度化を行い,せん断応力下のガスハイドレートの相変化,分解挙動の顕微鏡観察,高圧ラマン・ブリュアン散乱測定を行うための研究環境整備を行ってきた。また,メタン-プロパン混合ガスハイドレートの単結晶作製は比較的高度な技術を要するため,せん断応力下のガスハイドレートの物性評価を効率的に行うためには,単結晶作製が容易でメタン-プロパン混合ガスハイドレートとよく似た弾性的性質,構造安定性を有するガスハイドレートを代替試料として用いることが有効である。そこでメタン-テトラハイドロフランハイドレート,メタン-オキセタンハイドレートについて高圧ブリュアン散乱測定により弾性的性質を評価した結果,これらが有力な候補であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度では,せん断応力を印加できる高圧アンビルセルの開発,高圧ブリュアン散乱分光装置の検出系の再構築による高感度化を行い,せん断応力下のガスハイドレートの弾性的性質,構造安定性を評価するための実験環境整備を行うことが主目的であった。以下に,それら達成度について示す。 (1)せん断応力を印加できる高圧アンビルセルの開発:光散乱測定を用いてせん断応力によるガスハイドレートへの影響を詳細に調べるためには,レーザー光の集光による空間分解能を十分にカバーすることができる大きさの試料室を有するセルが必要である。そこで一般的な高圧ダイヤモンド・アンビル・セルの50倍である1立方mmの試料室体積に設定して,高圧アンビルセルを設計した。設計に際しては,高圧中性子回折実験で培った大体積高圧アンビルセルの技術を基盤として,せん断応力を印加できる構造を付加した。しかし,製作が平成26年度中には間に合わず,加圧およびせん断応力の発生試験には至っていない。 (2)高圧ブリュアン散乱分光装置検出系の再構築による高感度化:現有設備である高圧ブリュアン散乱分光装置の検出系をより高感度の検出器に交換した。また,同時に制御系についても改良し,これまでよりもより高精度・高感度で測定を行うことが可能になっている。これにより,比較的強度の弱いガスハイドレートのブリュアン散乱測定を効率的に行うことができるようになり,当初の目的以上の成果を得ている。 せん断応力を印加できる高圧アンビルセルの開発については若干の遅れが生じているものの,ガスハイドレートの物性評価を効率的に行うためのメタン-プロパン混合ガスハイドレート代替試料メタン-テトラハイドロフランハイドレート,メタン-オキセタンハイドレートの弾性的性質の評価を行うなど,当初の目的以外の成果も得られており,全体としてはおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度以降では,せん断応力を印加できる高圧アンビルセルの開発を引き続き行うとともに,せん断応力下のメタンハイドレート,メタン-プロパン混合ガスハイドレート,メタン-テトラハイドロフランハイドレート,メタン-オキセタンハイドレートの相変化,分解挙動の顕微鏡観察,せん断応力下のメタンハイドレートの高圧ラマン・ブリュアン散乱測定を行い,ガスハイドレートの弾性的性質,構造安定性とせん断歪との関係を明らかにしていく。 最終的にはこれら情報を解析し,メタンハイドレートsI相及びメタン-プロパン混合ガスハイドレートsII相の相変化,ホスト水ケージのゲストガス分子占有状態,弾性的性質,構造安定性を圧力及びせん断応力の関数として評価する。さらに,sI相, sII相の弾性的性質の差異の原因,構造安定性へのせん断応力の影響,そのゲスト分子の役割等を明らかにし,包接水和化合物の持つ弾性的性質を総合的に解明する。また,海底地層中のメタンハイドレートの構造安定性についても考察していく。
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