研究課題
本年度は下記の成果を得た。(1)スピン三重項超伝導が実現していると考えられているCuxBi2Se3の比熱の磁場方向依存性が、結晶の持つ回転対称性を破った180度周期の振動を示すことを見出し、「ネマティック超伝導状態」の初めての熱力学的な証拠を示すことに成功した。(2)同じくスピン三重項超伝導が実現していると考えられているSr2RuO4に関しては、この超伝導が強磁性体SrRuO3に直接染み出すことができることを明らかにした。これはスピン三重項超伝導実現の強い証拠であるだけでなく、超伝導の持つスピン自由度をコントロールできる可能性を拓くものでもある。(3)また、Sr2RuO4の核磁気共鳴実験を行なった。特にSr2RuO4の酸素サイトのナイトシフトを超伝導上部臨界磁場近傍で詳細に測定した。磁場中の超伝導転移はマイスナー信号の観測や1/T1の測定から確認できたが、ナイトシフトの変化は観測されず、これまでに提唱されているスピン三重項超伝導性をより詳細に確認できた。特に、異なるサイトのナイトシフトの測定より、少なくともγバンドが関係する磁化率は超伝導転移に伴って変化していないことを示した。(4)また、Ru核の核四重極共鳴による核スピン-スピン緩和率(1/T2)の測定を行い、超伝導転移後に1/T2が増大することを示した。この結果は超伝導状態でc軸方向にゆらぎが存在することを示しており、超伝導状態で内部自由度が存在していることを示す結果と考えられる。(5)また、Sr2RuO4の圧力下での実験を目指した国際共同研究を進めている。(6)他に、スピン三重項超伝導と強く関連しているトポロジカル超伝導について、レビュー記事を執筆した。また、スピン三重項超伝導が実現していると考えられるウラン系物質、スピン一重項超伝導の対照物質等の研究も行った。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (23件) (うち国際学会 10件、 招待講演 9件) 備考 (4件)
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