研究課題/領域番号 |
26287079
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
遠山 貴巳 東京理科大学, 理学部, 教授 (70237056)
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研究分担者 |
筒井 健二 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究センター, 研究主幹 (80291011)
曽田 繁利 独立行政法人理化学研究所, 計算科学研究機構, 研究員 (60466414)
兼下 英司 仙台高等専門学校, 総合科学系, 准教授 (60548212)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 共鳴非弾性X線散乱 / 強相関電子系 / 3d遷移金属化合物 / 計算物理学的手法 |
研究実績の概要 |
非弾性X線散乱は一般には電荷励起を探る手段だが、中間状態でスピン・軌道相互作用が働くL 吸収端共鳴非弾性X線散乱 (RIXS) ではスピン励起も観測される。そのため、3d 遷移金属化合物のスピンダイナミクスの研究にL 吸収端共鳴非弾性X線散乱が活用されている。H26年度は、まず、銅酸化物高温超伝導体のL 吸収端RIXS で見られるスピン励起と電荷励起の解明のため、電子ドープ系に焦点を当てた。スピン反転のプロセスを現象論的に取り入れ、コアホールの存在をポテンシャルとして取り込んだ計算を厳密対角化法で実行し、高速衝突近似との比較を行うとともにスピン励起のドーピング依存性を調べた。また、電荷励起を見るにはホールドープ系よりも電子ドープ系が有利であることを明らかにした。さらに、動的密度行列繰り込み群法によって電子ドープ系の動的電荷相関関数を「京」コンピュータを用いて計算し、スピン相関に起因した低エネルギー電荷励起がL 吸収端 RIXS によって観測可能であることを指摘した。多軌道が働く鉄系高温超伝導体の研究では FeTe 系のスピン・電荷・軌道の励起を平均場近似によって調べ、非弾性X線散乱実験やRIXS実験に対する提案を検討した。また、RIXS 研究の新しい展開を探るため、フラストレートした量子スピン系やスピン・軌道相互作用が強い量子スピン系の基底状態、格子振動と結合した一次元モット絶縁体の励起ダイナミクスを数値計算手法によって調べ、それらの系に対するスピン・電荷ダイナミクスを検討した。実験グループとの連携を進めるため、連携研究者らを中心とした実験家を集め、実験と理論の情報交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最も重要な課題である、銅酸化物高温超伝導体に対する共鳴非弾性X線散乱の理論とそれに関わるスピン励起・電荷励起ダイナミクスの研究が進展しており、目的の達成に向けて研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
来年度はとくに多軌道3d遷移金属化合物の軌道励起を(共鳴)非弾性X線散乱で観測するための理論を構築することに重点を置く。また、実験研究者(一部は連携研究者として参画)との情報交換を密に行っていくことで、当該研究課題の展開を加速する。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費が想定よりもわずかに安くなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
成果発表のための旅費の一部として使用する。
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