研究課題
カンチレバーを用いた高周波磁気共鳴力顕微鏡の装置開発を行い、以下の成果を得ることができた。低温で駆動する3軸ピエゾステージを自作し、その動作特性を確認した。作製したステージは完全非磁性であり数テスラの強磁場中でも100 nm程度の位置分解能で動作することを確認した。また、実際にカンチレバー上に微小磁気チップを取り付け、測定対象であるDPPH試料に対して1次元の空間分解測定を行った。磁気チップ-カンチレバー間の距離をリアルタイムで計測するための光学系を別途用意し、カンチレバーの変位測定系とパラレルな測定を可能にした。その結果、磁気チップ-試料間距離に依存してDPPHのESR信号強度の変化が観測された。これは共鳴スライスの変化によるものとして理解できる。一方で、共鳴磁場の変化が観測されなかったことから、試料位置に発生している磁場勾配はESR共鳴線幅よりも小さいことが示唆された。また、本研究で開発した高周波ESR測定技術を用いて金属タンパク質のモデル物質について高周波ESR測定を行った。銅ポルフィリン錯体については約1μgの微小試料について0.39 THzまでのESR測定に成功し、10^9 spins/Gという最小スピン検出感度の実現に成功した。また、ヘムタンパク質の活性中心であるヘミン分子の微量試料(~100 ng)に対しても高周波ESR測定を行い、0.5 THzまでの高周波ESR信号の検出に成功した。この測定では巨大なヘミン分子の磁化成分によるダイナミックレンジの問題を解決するため、光学系にフィードバックにかけて広ダイナミックレンジ測定を可能にした。その結果、ヘミン分子に特徴的なg=6のESR信号の検出に成功し、多周波数測定の結果から詳細なゼロ磁場分裂定数の導出に成功した。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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