研究課題
本研究は、Ca-Fe-As三元系の物質開発を進め、ヒ素の化学を利用した超伝導転移温度上昇のアイデアを試み、転移温度上昇の物質条件を明らかにすることを目的としている。このなかで平成26年度は、2013年に筆者らが八件した新しい鉄系超伝導体112型CaFeAs2における物質開発と超伝導転移温度上昇機構の解明に取り組んだ。以下にその研究実績を記す。1. LaとSbをコドープしたCaFeAs2の電子相図を作成し超伝導増強因子を明らかにした。溶融法により様々なLaとSb組成の単結晶試料を育成し、蛍光X線による化学組成分析、粉末X線回折による結晶構造解析、磁化と電気抵抗率による超伝導特性の測定を進め、超伝導転移温度と組成についての電子相図を完成させた。Laドープ量xが0.12から0.25の範囲で112相が生成し、La量x=0.12、Sb量y=0.1において最高の超伝導転移温度Tc= 47 Kが得られた。La量xの増加とともにTcは低下し、x=0.25で超伝導は消失した。構造解析の結果、LaドープによりAs-Fe-Asの結合角が正四面体の最適値に近づくときTcが最高値を示すことが明らかになった。2. イオン半径がLaよりも小さいCe, Pr, Ndをドープした112型CaFeAs2における超伝導の発見。Ceドープは超伝導を示さなかった。PrおよびNdドープでは10K程度の超伝導が発現した。いずれもSbをコドープするとTc=43Kの超伝導が現れることが明らかになった。3. 関連物質の開発の課程で新調伝導体 Li2IrSi3 を発見した。Tcは3.8Kであった。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究実施計画を概ね達成した。単結晶試料の大型化が進まず、角度分解光電子分光実験の共同研究が進展しなかったので (2) おおむね順調に進展しているという評価とした。一方で EXAFS の実験に充分な品質の微小結晶を育成することができた。H27年度の初めにイタリアの放射光施設において国際共同実験を行うことになっている。
超伝導転移温度と組成に関する相図に続いて、反強磁性秩序と組成に関する相図の作成に取りかかる。このために国内共同研究としてH27年年度の中性子散乱およびミュオンスピン回転実験の申請を行い、採択された。必要量の試料の合成を急ピッチで進めている。また、ヒ素の化学を利用した新物質の開発を引き続き推進する。
申請時に購入を予定していた設備備品(単結晶育成用ブリッジマン炉)を購入する必要が無くなったため。
消耗品費(石英ガラス管、アルミナ坩堝、試薬、ガスボンベ、寒剤など)、国内旅費、海外旅費、英文校正、X線装置使用料など、平成27年度の研究計画の遂行に必要な経費として使用する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 9件)
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