研究課題
平成28年度はそれまでに観測に成功していた原子イオン間の電荷交換衝突過程について,衝突エネルギー依存性の詳細な検証を行った。我々の測定により電荷交換衝突が古典的な衝突理論で予言できるエネルギー依存性を示しており,さらに散乱断面積がイオンの内部状態に強く依存することを実験的に突き止めた。さらにその非弾性散乱断面積のイオン内部状態依存性を理解するために理論研究者との共同研究を開始した。実際理論グループの計算結果と実験による測定結果を突き合わせることにより,非弾性散乱がどのエネルギー準位を経由して起こっているかを突き止めることができ,さらに散乱断面積の大きさについても定性的に理解することができるようになった。また,さらなる低温化のための冷却手法としてのサイドバンド冷却を適用するため,強い閉じ込めを実現するためのトラップ装置の設計と開発を行い,同時に狭線幅の遷移の励起のためのレーザーの準備を行った。実際にサイドバンド冷却を適用しイオンを25マイクロケルビンという温度領域(ほぼ振動基底状態)へと冷却することに成功した。さらに今年度は単一イオンと原子気体とを弾性散乱により衝突させたときの振る舞いについて詳細に調べた。比較的温度の高いイオンと温度の低い中性原子が衝突すると熱交換が起こり,イオンの温度を下げることができる可能性がある。これは共同冷却と呼ばれる冷却手法であり,レーザーを用いずにイオンを冷却する手法として注目されている技術である。我々は今年度の研究によりイオンの温度が中性原子と混合させると下がること,さらに中性原子の原子密度が高いほどその低温化が顕著であることを実験的に観測することに成功した。これはイオンの共同冷却を実現するうえでの極めて重要なステップである。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件)
Physical Review A
巻: 95 ページ: 032709
DOI: 10.1103/PhysRevA.95.032709
Journal of Physics B: Atomic, Molecular and Optical Physics
巻: 49 ページ: 204001
doi:10.1088/0953-4075/49/20/204001