研究課題
極地の海に住む魚の血液中に含まれる不凍タンパク質の機能は、氷結晶の主要な結晶面であるプリズム面およびピラミッド面に吸着し、それらの面の成長を抑制するということをベースとして議論されてきた。この際、氷のもう一つの主要な結晶面であるベーサル面には吸着せず、その成長には何ら影響を及ぼさないことが前提とされた。氷のベーサル面は、本来成長速度が他の面に比べて極端に遅いため、このようなモデルでも生体の凍結抑制は一応説明できると考えられてきた。しかし、国際宇宙ステーションで行った不凍糖タンパク質(AFGP)の水溶液中でのベーサル面の精密な成長速度の測定では、ベーサル面の成長が大幅の促進されたり、周期変動することが明らかになった。一般に、不純物分子の効果は、それらの分子が成長界面に吸着して成長ステップの前進をピン留めする(ピン留めモデル)ため、結晶成長を抑制するものとして取り扱われてきた。本研究で明らかになった不凍タンパク質分による氷ベーサル面の成長促進は、これまでの不純物効果モデルとは全く反するものであり、そのような現象の存在も予測されていなかった。さらに、本年度に実施した魚由来の別な種類の不凍タンパク質(AFP type III)の水溶液中での氷結晶成長実験では、同様にベーサル面の成長速度が促進されることが明らかになった。一方、バクテリア由来の不凍タンパク質で同様な測定を行ったところ、反対にベーサル面の成長が抑制されることが明らかになった。以上のように、不凍タンパク質の機能の発現機構に関して、ベーサル面の成長に対する効果が極めて大きな鍵を握ることが本実験を通じて明らかになった。以上の結果、不凍タンパク質の氷結晶に対する機能は、吸着界面の方位で大きく異なる(異方的機能性)ことが示され、特性が生体の凍結抑制機能の本質であることが、本課題により初めて明確に示された。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Cryst. Growth. Des.
巻: 18 ページ: 2563-2571
10.1021/acs.cgd.8b00172
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https://academist-cf.com/journal/?p=4410
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