棒状分子が作る繊維構造、液晶構造および結晶構造の形成過程とその弾性特性について、分子シミュレーションと密度汎関数理論を用いた解析を行った。1)棒状分子の作るネマチック液晶相と界面活性剤膜の間のアンカーリングを、粗視化分子モデルを用いたモンテカルロシミュレーションにより解析し、界面活性剤膜の変形により液晶の配向が大きく影響を受け、膜の界面張力および曲げ弾性が繰り込まれる効果および膜近傍での特異な分子配向が生成されることを観測した。さらに、液晶と膜の密度汎関数理論を構築し、分子シミュレーションで得られた結果が、定性的に再現できることを示すことで、変形できる膜と液晶との間のアンカーリングの特性が明らかになった。2)両生類の脚の表面のファイバーを構成するたんぱく質のアミノ酸配列から粗視化分子モデルを構築し、分子動力学シミュレーションにより背に構造を再現し、その弾性特性を求めたところ、実験と良い一致が見られた。3)棒状のセグメントから構成される高分子鎖の結晶化過程のモデルとして、棒状のセグメント間にネマチック相互作用のある高分子を考え、その配位を転送行列を用いて記述することで、結晶化の不安定性とネマチック相互作用、高分子の配向の保持長との関係を明らかにした。 このほかに、固体壁に開けられた小孔を透過する生体膜の変形と運動の粗視化モデルを構築し、自由エネルギーランドスケープにおける反応経路と実際の経路との違いについて議論した。
|