研究実績の概要 |
温度・圧力・塩濃度ともに変化する疎水性水和と疎水性相互作用のメカニズムの解明に取り組み,以下の点を明らかにした. まず,メタンのような小さな疎水性溶質の溶解度(あるいは溶媒和自由エネルギー)の温度依存性,圧力依存性,および塩濃度依存性(NaCl水溶液)は我々が採用した平均場近似法によって正確に記述されることがわかった.さらに,溶質分子間に働く有効相互作用(メタン分子同士の接触距離における平均力ポテンシャル値)も平均場近似によりほぼ正確に与えられることが明らかになった.このような平均場近似の妥当性を踏まえ,溶解度および疎水性相互作用に対する温度,圧力,塩濃度それぞれの効果の物理的起源を明らかにした. 第二に,水溶液中のメタン分子間有効相互作用と溶媒和自由エネルギーとの相関について検討した.広範な熱力学条件について,温度・圧力・塩濃度のいずれの変化に対しても,有効相互作用W*と溶媒和自由エネルギーμ*との間にほぼ線形相関が得られることが明らかになった.ただし,線形相関の傾きdW*/dμ*は,熱力学的変化のモードに依存する.メタン水溶液については,1 atmにおける温度変化および1 atm, 298 Kでの塩(NaCl)濃度変化について傾きdW*/dμ*の値はほぼ同じである.しかし,298 Kにおける圧力変化についての傾きdW*/dμ*は他の二つの場合に比べ顕著に小さい. 溶媒和過程の熱力学および統計力学的考察から,それぞれの熱力学的変化のモードに対する傾きdW*/dμ*を溶媒和熱力学量および相関関数積分によって表すことができることを示した.
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